国鉄9050形蒸気機関車

9050形蒸気機関車：北海道から中国へ、その数奇な運命

9050形は、北海道炭礦鉄道が発注したコンソリデーションタイプのテンダー式蒸気機関車です。発注元の北海道炭礦鉄道が国有化されたため、製造したアメリカン・ロコモティブ社（アルコ）から鉄道院、鉄道省へと所有者が移り変わるという、少し変わった経緯を持っています。

誕生と導入

1907年（明治40年）に26両が輸入されました。メーカーはアルコのピッツバーグ工場です。製造番号は44551から44576まで付与されています。しかし、到着時には北海道炭礦鉄道が国有化されていたため、直接官設鉄道に編入されました。メーカーの記録では北海道炭礦鉄道が発注したものとされていますが、1908年（明治41年）の鉄道年報では、そのうち6両が「石狩石炭会社からの購入」と記録されており、北海道炭礦鉄道国有化の対象からも外れていました。輸入・組み立て後から使用されていたのは確認されており、国有化の際に宙に浮いた格好になった6両は、輸入を取り扱った三井物産から一旦石狩石炭の所有となり、その上で官設鉄道に納入されたものと推定されています。

特徴

9050形は、9000形系列の小型コンソリデーション機ですが、砂箱が蒸気ドームと煙突の間に1個設置されている点や、運転室の床面が高められている点など、9000形や9030形に比べて洗練された印象を与えます。ピッツバーグ工場製ではありますが、アルコ統合後しばらく経ってからの製品であるため、デザイン上のピッツバーグ色は薄く、スケネクタディ色が強いのが特徴です。9000形・9030形の「小コン」に対して「新コン」（新型コンソリデーション）という愛称で親しまれました。

主要諸元

全長: 14,395mm
全高: 3,642mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 2-8-0(1D)
動輪直径: 1067mm(3'6")
弁装置: スティーブンソン式アメリカ形
シリンダー（直径×行程）: 406mm×508mm
ボイラー圧力: 11.3kg/cm2
火格子面積: 1.57m2
全伝熱面積: 99.0m2
煙管蒸発伝熱面積: 90.7m2
火室蒸発伝熱面積: 8.3m2
ボイラー水容量: 3.8m3
小煙管（直径×長サ×数）: 51mm×3,505mm×162本
機関車運転整備重量: 42.50t
機関車空車重量: 38.36t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 37.65t
機関車動輪軸重（最大・第3動輪上）: 11.23t
炭水車運転整備重量: 21.12t
炭水車空車重量: 11.65t
水タンク容量: 7.6m3
燃料積載量: 1.99t

経歴

国有化後のしばらくの間は、予定番号のまま100 - 125として使用されました。石狩石炭からの6両は、116 - 121の番号が付与されています。1909年（明治42年）に制定された鉄道院の車両形式称号規程では、9050形（9050 - 9075）に改められました。

配置は夕張地区および室蘭地区で、後に滝川や岩見沢に移りました。入換用としては、室蘭、苗穂、釧路などで使用されました。1937年（昭和12年）12月から1938年（昭和13年）11月にかけて、陸軍の要請により全車が供出され、苗穂、釧路、土崎、郡山、長野の各工場で1m軌間に改造され、中国（華北交通）の正太（チョンタイ）鉄路に送られました。軸重が軽く、まとまった両数があったことが、供出の理由でした。しかし、太平洋戦争後、日本に帰還した車両は1両もありませんでした。

中国での消息

中国語版の情報によれば、戦後、華北交通のソリA形から最終的にKD51形へ改称され、昆河線で1台が1961年より後まで運用されていたと推測されています。また、これとは別に柳州铁路局の南寧機務段に1962年まで1台のKD51が在籍していたという記録もあります。

9050形は、日本の鉄道史に名を刻んだだけでなく、中国の鉄道史にもその足跡を残した機関車なのです。

参考文献

臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社刊
金田茂裕「日本蒸気機関車史 官設鉄道編」1972年、交友社刊
川上幸義「私の蒸気機関車史　上」1978年、交友社刊
高田隆雄監修「万有ガイドシリーズ12　蒸気機関車 日本編」1981年、小学館刊
小熊米雄　「”新コン”流転」SL　No.2、1969年　交友社刊 pp.59 - 66

関連項目

* 国鉄9200形蒸気機関車

もう一度検索