国鉄C60形蒸気機関車

国鉄C60形蒸気機関車：C59形の系譜と地方路線での活躍

国鉄C60形蒸気機関車は、東海道本線や山陽本線といった主要幹線区間が電化されたことに伴い、余剰となったC59形蒸気機関車を改造して誕生しました。C59形は特甲線用として設計されていたため軸重が大きく、他の路線への転用が困難でした。そこで、C60形では従台車を1軸から2軸に変更することで軸重を軽減し、運用可能な路線を拡大しました。

構造と性能

この改造により、軸配置はパシフィック(2C1)からハドソン(2C2)へと変化しました。牽引力は若干低下したものの、その他の性能はC59形とほぼ同等でした。配属された路線では、それまでの主力機であったC57形を代替し、輸送力強化に貢献しました。同時に、老朽化が進んでいたC51形も段階的に淘汰していきました。

C60形は、1953年から1955年にかけて東海道本線名古屋以西の電化に伴い、また1960年から1961年にかけて山陽本線岡山以西と東北本線福島の電化に伴い、浜松工場と郡山工場で計47両が改造されました。改造にあたっては、機関部と炭水車間の中間連結器の改良や動力式火格子動揺装置の整備なども行われました。しかし、石炭の品質向上により、C61形やC62形に計画されていた自動給炭装置は搭載されませんでした。

従台車には、鋳鋼製台車枠のLT254型や、溶接組立と円筒形コロ軸受、貨車から流用した車輪を用いたLT254A型が使用されました。当初は重油併燃も計画され、一部の車両には重油タンクが搭載されましたが、本格的な運用には至らず、短期間で撤去されました。

運用と活躍

C60形は、電化が遅れていた東北本線（白河以北）、常磐線、奥羽本線（秋田以北）、鹿児島本線（鳥栖以南）、長崎本線、佐世保線などで活躍しました。普通列車から特急列車、さらには荷物列車まで幅広く運用され、輸送量の多い路線を支えました。

特に東北本線と常磐線には、竣工した47両のうち36両が配属されました。盛岡以北の区間では、C61形やD51形と重連や三重連を組んで、旅客列車や荷物列車、さらには特急・急行貨物列車の牽引に当たりました。青森機関区には1960年10月配置され、老朽化したC51形の置き換えに貢献しました。奥羽本線では1960年10月から運用開始され、「日本海」などの急行列車の牽引にも使用されました。

九州には1960年から1961年にかけて11両が配置され、その後も東北地方からの転属機が加わりました。鹿児島本線、長崎本線、佐世保線などで活躍し、長崎本線では寝台特急「さくら」「あかつき」の牽引も担当しました。

退役と保存

東北地方のC60形は、1968年10月の東北本線全線複線電化完成により、多くの車両が廃車となりました。C60 1は仙台市に移管され、西公園で静態保存されています。この保存は、当時7歳だった少年の手紙がきっかけとなったことで知られています。九州のC60形も、1970年10月の鹿児島本線全線電化により全廃されました。

現在、静態保存されているC60 1は、C59形からの改造車の証である煙室前面エプロンの形状や炭水車などを残しており、貴重な歴史的遺産となっています。また、C60 20の動輪が福島県喜多方市で保存されています。C60形は、近代化が進む中で消えていった蒸気機関車の歴史を今に伝える貴重な存在です。

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