国鉄ED30形電気機関車 (初代)

国鉄ED30形電気機関車（初代）

国鉄ED30形電気機関車は、1940年代に製造された直流用電気機関車で、その生涯において複数の鉄道会社を渡り歩いた特異な経歴を持っています。製造されたのはわずか1両のみで、その希少性からも鉄道ファンにはよく知られた存在です。

誕生から国鉄へ

本形式は、元々現在の飯田線の一部を運営していた豊川鉄道が、自社のデキ54形電気機関車として日本車輌製造に発注したものでした。しかし、製造途中の1943年8月1日に豊川鉄道が戦時買収されたため、完成した1944年8月には、一度も私鉄籍に入ることはなく、直接鉄道省の所属となりました。

外観は、低く幅広のボンネットを前後に持つ凸型機関車で、その前面側面には多数のルーバーが設けられており、力強い印象を与えます。

国鉄での活躍

就役後、当初は豊川鉄道時代の形式番号である「デキ54」のまま飯田線で運用されましたが、1952年にED30形（初代）ED30 1に改称・改番されました。その後、同年に小野田線（旧宇部電気鉄道区間）に転属し、さらに1961年にはED25形（2代）ED25 11へと再度改番されました。

伊豆急行への譲渡とその後

1963年、ED25 11は国鉄を離れ、伊豆急行に払い下げられました。伊豆急行では、それまで電車の牽引で行っていた貨物輸送を、この機関車が担うことになりました。伊豆急行では番号の変更なく使用されましたが、同線の貨物輸送廃止後は、伊豆急下田駅での特急「踊り子」の客車入換や工事用車両の牽引などにその役割を縮小しました。1994年9月26日にはさよなら運転が実施され、同年10月6日付で廃車となりました。

東急での第二の人生

廃車後、ED25 11は伊豆急行の親会社である東京急行電鉄に譲渡され、1995年に整備の上、同社長津田車両工場の構内入換機として再出発しました。この際、再び「ED30 1」と標記されるようになりました。ただし、本線での運用はないため、鉄道車両としての登録は行われず、構内用移動機械扱いとなりました。また、塗装もエメラルドグリーンに変更されました。

1961年の改番時に、元の砲金製ナンバープレートを裏返して取り付け、その上にペンキで「ED25 11」と書かれていたことが、東急入線時に判明しました。整備の際に、ナンバープレートは元の陽刻文字が見えるように復元されました。その後は、通称として「ED30 1」を名乗りました。

長津田車両工場では、老朽化した牽引車の代替として、2009年1月からアント製のディーゼル牽引車が導入されたことに伴い、ED30 1は用途廃止となり、同年6月に他の車両とともに解体されました。

参考文献

伊藤陽一「日車40t電気機関車兄弟物語 豊川鉄道（国鉄）デキ54、関西急行（近鉄）デ25、そして……」『鉄道ファン』第447号、交友社、1998年7月、120 - 125頁。

関連項目

近鉄デ25形電気機関車
* 国鉄ED30形電気機関車 (2代)

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