国鉄ED55形電気機関車

国鉄ED55形電気機関車とは

国鉄ED55形電気機関車は、旧国鉄が計画した旅客列車用の直流電気機関車です。蒸気機関車のC63形や電車の187系、客車のマイテ30形などと同様に、試作機が製造されることなく計画のみで終わった未成車両であり、幻の形式として知られています。この機関車は、1926年と1941年の2度にわたり計画されましたが、いずれも実現には至りませんでした。

1926年の計画

1926年の計画は、中央東線の電化が進む中で、当時横須賀線で使用されていたイングリッシュ・エレクトリック（デッカー）製のED50形、ED51形、ED52形電気機関車を貨物用に改造転用（後のED17形）することに伴い、その代替として旅客用に投入される予定でした。この計画では、ゼネラル・エレクトリック製のED14形に類似した車体構造で、デッカー製の私鉄向け電気機関車のようなデッキと一体化した板台枠台車を組み合わせたような構造が想定されていました。軸配置は1B+B1で、重量は68トンとなる予定でした。しかし、1928年に標準型電気機関車の先駆けとなるEF52形が登場したことで、ED55形が雑多な形式になることが見込まれました。さらに、1930年の横須賀線電車化により、この計画は中止されました。

1941年の計画

1941年の計画は、中央線に残存していたED50形とED51形をED17形に改造するために、上越線に投入されていたEF12形の余剰車であるED16形の一部を歯車比を変更して転用するというものでした。しかし、太平洋戦争が勃発し、貨物輸送が優先される状況となったため、結局この計画は実現せず、ED16形は改造されることなく中央線に転属しました。


このように、ED55形は2度にわたる計画が立てられましたが、いずれも様々な理由により実現することなく、幻の形式となりました。この機関車の計画は、当時の鉄道技術の進歩や社会情勢の変化を反映しており、鉄道史を語る上で興味深い事例の一つと言えるでしょう。

参考資料

電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1960年5月号 No.106「ED55のなぞ」P.52-53

関連項目

国鉄ED17形電気機関車
国鉄ED16形電気機関車
国鉄EF52形電気機関車

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