国鉄ED16形電気機関車

ED16形電気機関車：国産技術の礎を築いた名機

ED16形は、1931年（昭和6年）から製造された日本国有鉄道（国鉄）の前身である鉄道省の直流用電気機関車です。当時、輸入機が主流であった中、国産技術による電気機関車の開発を目指し、製造されました。その誕生から引退まで、日本の鉄道史において重要な役割を果たした名機と言えるでしょう。

誕生の背景

1920年代、東海道本線や横須賀線の電化に際して、欧米から電気機関車を輸入していました。しかし、多種多様な形式が少数ずつ輸入されたため、運転や保守に課題がありました。そこで、鉄道省と民間会社が共同で、国産の標準型電気機関車としてEF52形が開発されました。

本線用の大型機であるEF52形に対し、支線用の旅客機としてED55形が計画されましたが、製造前に中止となりました。その設計を基に、勾配線区や貨物列車用の低速中型機として開発されたのがED16形です。1930年代初頭の中央本線甲府電化と上越線清水トンネル区間の電化に合わせて製造されました。

構造

ED16形は、EF52形を小型化したような外観を持ち、箱型の車体と両端のデッキが特徴です。動輪は4軸、両端に先輪が1軸ずつあります。内部機器はEF52形をベースに開発されましたが、D形機であるため回路構成は比較的単純です。

勾配線区での運転を考慮し、空転検出回路による警報装置や重連総括制御装置を備えましたが、雪による故障や技術的な問題から、重連総括制御装置は短期間で撤去され、空転警報装置も後に使用停止となりました。しかし、本形式は試験に使いやすい構造だったため、様々な試験に用いられ、その結果は後の電気機関車開発に活かされました。

製造

1931年に18両が製造され、製造メーカーは三菱重工業、日立製作所、東芝、川崎造船所でした。

運用

製造当初は、東京機関区や国府津機関区に配置され、上越線や中央本線で活躍しました。戦時中には輸送量増加のため、甲府機関区や八王子機関区に転属し、中央本線で集中的に運用されました。

戦後、幹線にF形電気機関車が増備されると、ED16形は次第に支線での運用が中心となりました。青梅線、五日市線、南武線などでは貨物列車を牽引し、特に青梅線では線路等級の問題から長年使用され、鉄道ファンに親しまれました。1983年には「さよなら運転」を行い、1984年に全車が廃車となりました。

保存車両

現在、1号機が青梅鉄道公園に静態保存されており、準鉄道記念物・重要文化財に指定されています。

主要諸元

全長: 15360mm
全幅: 2810mm
全高: 3940mm
軸配置: 1B+B1
機関車運転整備重量: 76.80t
動輪上重量: 59.64t
最大軸重: 14.91t
電気方式: 直流1500V
1時間定格出力: 900kW
1時間定格引張力: 10,100kg
最高運転速度: 65.0km/h
1時間定格速度: 32.5km/h
主電動機: MT17形4基
動力伝達方式: 1段歯車減速吊り掛け式
歯車比: 17:81（1:4.77）
制御方式: 重連（のち非重連）、抵抗制御、2段組合せ、弱め界磁制御
制御装置: 電磁空気単位スイッチ式
制御回路電圧: 100V
ブレーキ装置: EL14A空気ブレーキ、手ブレーキ
台車形式: 主台車：不明、先台車：LT124

関連した事件

湯の花トンネル列車銃撃事件：1945年8月5日、ED16 7号機が牽引する列車がアメリカ軍戦闘機に銃撃されました。

まとめ

ED16形は、その誕生から引退まで、日本の鉄道史において重要な役割を果たした電気機関車です。国産技術の発展に貢献し、長きにわたり多くの人々に愛されました。保存されている1号機は、その歴史を今に伝える貴重な存在です。

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