国鉄ED78形電気機関車

ED78形電気機関車

ED78形電気機関車は、日本国有鉄道（国鉄）が開発した交流電気機関車で、特に急勾配区間を運行することを目的に設計されました。本機は1968年に奥羽本線の一部が交流電化された際に導入され、特に板谷峠のような急勾配を克服するために開発が進められました。

開発の背景

板谷峠は平均勾配が33‰あり、急勾配区間として知られています。この区間は1949年から直流電化されていましたが、1968年10月に交流電化されることとなりました。これに伴い、急勾配を通過できる新しい機関車の必要性が高まりました。 ED78の設計には、特別な運転技術を要しないことや、脆弱な軌道への適合が求められました。このため、主回路に抵抗器を用いない交流電気機関車として、発電ブレーキを使った抑速機構が考慮されました。

構造と特性

ED78形は、国鉄の交流電気機関車の特徴的な車体設計を採用しています。車両の長さは17,900mmで、重連運用に備えた貫通路が正面に設けられており、冬季の厳しい気象条件への対策も施されています。

制御方式にはサイリスタ位相制御が採用され、4基の直流直巻電動機が搭載されています。また、軸重可変機能を持つ中間台車を取り入れ、特に脆弱軌道への入線を可能にしています。これにより、仙山線や磐越西線での運行にも対応できる機能を備えています。また、保安全装置も強化され、万一の停電や故障に備えた非常ブレーキシステムが搭載されています。

製造と試作機

ED78形は日立製作所で製造され、試作車であるED94形が先行して開発されました。ED94形は1967年に製造され、試験を経て1968年に量産車としてED78 901となりました。量産化の際には、一部機器の配置変更や性能向上を図った改良が加えられています。

運用と重量制限

新製後は、主に奥羽本線および仙山線において、寝台特急「あけぼの」や急行「津軽」などの優等列車に幅広く利用されました。運用の中で、ED78形はEF71形との重連運転も行われ、特に天候や線路状況によって運行効率を高めるために活用されました。

特に、「あけぼの」は1970年の運転開始以降、貨物列車との連結が行われることが多く、補機として本形式やEF71形が頻繁に連結されました。これにより、運行の安定性を確保しました。1990年代には、運用が減少し、ED78形の多くが廃車となりましたが、一部は貨物列車や臨時列車で使用され続けました。

保存機

ED78 1は福島運転所での保管から新幹線総合車両センターに展示されるなど、その歴史の証人として保存されています。一方、ED78 901は扇形庫解体過程で失われました。

このように、ED78形電気機関車は日本の鉄道において重要な役割を果たし、その技術と運用の多様性が評価されています。

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