国防情報参謀部

英国国防情報部 (DI): 英国インテリジェンスの中枢を担う情報機関

英国国防情報部（Defence Intelligence, DI）は、英国の国防省に属する主要な情報機関です。国防情報局、国防情報参謀部といった呼称も用いられます。1964年、海軍省、戦争省、空軍省が国防省に統合された際に、各軍の情報部門を統合して発足しました。現在、ロンドンのホワイトホールにある旧陸軍省ビルに本部を置き、およそ3600人の職員が勤務しています。

DIは、英国のインテリジェンス・コミュニティーにおいて重要な役割を担っており、合同情報委員会（JIC）からの情報要求に応えるなど、政府全体の安全保障政策に貢献しています。国防情報長官はJICの副委員長も兼任し、政府全体の情報戦略において中心的な役割を担います。

DIの情報収集能力は多岐に渡ります。主にイミント（映像情報）とシギント（信号情報）を専門としていますが、ヒューミント（人的情報）も重要な情報源の一つです。特に、軍事作戦における専門的な支援を提供する国防ヒューミントユニット (DHU) は、三軍合同組織として活動しています。これらの情報は、戦略的、戦術的な意思決定に役立てられています。

DIの予算は国防予算から支出され、活動範囲は英国国内に留まりません。ドイツやキプロスなど海外にも拠点を持ち、グローバルな情報収集ネットワークを構築しています。

組織構造

DIは、国防情報長官を頂点とした階層構造を持っています。長官の下には、分析・評価を担当する国防情報副長官、情報収集と能力向上を担当するサイバー情報及び情報統合担当軍事副長官が置かれています。さらに、以下の部門が存在します。

戦略的評価センター: 地域およびテーマ別の分析・評価を実施
能力評価センター: 武器システムとプラットフォームの評価を実施
カウンター拡散センター: 核・生物・化学兵器などの拡散防止活動に従事
カウンターインテリジェンスセンター: 敵対勢力による情報活動への対抗策を立案・実施
サイバー情報及び情報統合担当局: サイバーセキュリティと情報統合を担う
統合軍情報グループ (JFIG): 各軍との連携を強化
国防地理情報センター: 地理空間情報の収集・分析
国防地理センター (DGC): 地図作成など地理情報関連業務
共同サービス信号機構 (JSSO): 信号情報の収集・分析
国防情報保安センター: 情報のセキュリティ確保と人材育成

これらの部門が連携し、多様な情報源から得られた情報を分析・評価することで、英国政府に信頼できる情報を提供しています。

歴史と連携機関

DIは、冷戦時代から現代に至るまで、英国の安全保障に大きく貢献してきました。その活動は、他の英国の情報機関と密接に連携しています。例えば、秘密情報部（MI6）、保安局（MI5）、政府通信本部（GCHQ）などとの情報共有や協力関係を構築し、国家レベルの脅威に対処しています。また、国家犯罪対策庁（NCA）とも連携し、犯罪情報やテロリズム対策に関する情報交換を行っています。

DIは、英国のインテリジェンス・コミュニティーの中核機関として、今後も英国の安全保障に重要な役割を果たしていくことが期待されます。その活動は、常に機密性の高いものであり、その全貌を明らかにすることは難しいですが、その存在と役割は、英国の安全と繁栄を支える上で不可欠です。

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