国際SIL

国際SIL（SILインターナショナル）は、世界中の少数言語の研究、発展、そして記録に尽力する、キリスト教信仰に基づいた非営利団体です。その主な目的は、言語に関する知識を広め、世界全体の識字能力を向上させ、特にあまり知られていない言語の保護と発展を支援することにあります。

国際SILは、Ethnologue.comというオンラインデータベースを運営しており、世界中の言語に関する貴重な情報を提供しています。このデータベースは、言語研究者や翻訳者にとって重要なリソースとなっています。さらに、国際SILは、様々な言語研究資源を提供することで、世界中の言語研究の発展に貢献しています。

国際SILの活動の中核をなすのは、言語研究です。その研究成果は、言語の保護、発展、そしてより幅広い人々へのアクセス向上に役立てられています。また、国際SILは、ウィクリフ聖書翻訳協会と密接な関係にあり、聖書翻訳活動も重要な活動の一つとして位置づけています。これは、国際SILの活動が、言語と文化の保存だけでなく、宗教的な側面も強く持っていることを示しています。

国際SILの歴史は、1934年に始まった夏期言語講座(Summer Institute of Linguistics)に遡ります。この講座は、宣教師が現地語を習得するための訓練プログラムとして、アメリカ合衆国アーカンソー州で始まりました。この講座から、後にウィクリフ聖書翻訳協会の翻訳者となる多くの言語学者が輩出されました。

創設者であるウィリアム・キャメロン・タウンゼントは、グアテマラで宣教師として活動していた人物です。また、ケネス・パイクは、国際SILの歴史において非常に重要な役割を果たした人物の一人です。長年にわたって国際SILの会長を務め、言語学の発展に多大な貢献をしました。彼は、彼の業績が認められ、15年間ノーベル平和賞に推薦されたほどです。

国際SILは、ユネスコや国際連合といった国際機関から公式の諮問地位を与えられており、その活動は国際的に認められています。また、多くの国でNGOとして活動しており、世界規模での活動ネットワークを構築しています。さらに、国際SILは、テキサス大学アーリントン校、オレゴン大学、トリニティーウェスタン大学、ノーザンテリトリー大学などの高等教育機関と協力し、言語学プログラムに教員や教材を提供しています。

しかし、国際SILの活動に対しては、批判的な意見も存在します。調査地における活動が、文化や宗教に配慮のない独善的な介入となっているとの指摘や、活動の背景にあるキリスト教原理主義的な立場への懸念が挙げられています。また、言語研究や聖書翻訳といった活動は、密接に関連していますが、あくまで聖書翻訳のための副次的な活動に過ぎないという見方もあります。

国際SILは独自の言語コードであるSILコードを開発し使用しています。このコードは、世界中の言語に3文字のコードを割り当てており、言語の識別や分類に役立っています。当初はISO 639-2コードと一致しませんでしたが、現在はISO 639-3として国際標準化機構によって登録されており、国際的に統一された言語コードとして利用されています。

国際SILは、世界中の言語と文化の保存、発展に貢献する重要な機関です。その活動は、多様な側面を持ち、肯定的な評価と批判的な意見の両方が存在しています。しかし、言語研究における貢献は、広く認められています。今後、国際SILが、その活動を通じて、世界中の言語の多様性を守り、より良い未来を築いていくことが期待されます。

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