土佐街道

土佐街道：四国山地を越える歴史の道

土佐街道は、現在の高知県、かつての土佐国へと通じる複数の街道の総称です。四国山地を越え、各地から高知へ至るこれらの道は、単なる交通路としてだけでなく、文化や経済の交流を支える重要な役割を果たしてきました。

松山と高知を結ぶ道（松山街道）

このルートは、別名「松山街道」とも呼ばれ、大和時代には久万官道として開かれました。愛媛県松山から三坂峠を越え、久万、七鳥を経て高知県に入り、池川、大崎、佐川、伊野などを経由して高知に至ります。現在の国道33号が一部このルートを踏襲していますが、久万から大崎の間は仁淀川沿いを外れ、県道12号、国道494号、国道439号を経由していました。

明治時代になると、香川県出身の大久保諶之丞によって仁淀川沿いのルートが四国新道として改修され、1920年に県道松山高知線に指定されました。その後、国道23号、一級国道33号と変遷し、現在に至ります。三坂峠は標高720mと難所であり、現在も一部区間で道幅が狭く、急勾配やカーブが連続しています。冬季には-10℃以下になることもあり、タイヤチェーン規制が敷かれることもあります。現在、高知松山自動車道の整備が進められており、この街道の代替としての役割が期待されています。かつては急行バスが運行されていましたが、高速道路の開通により廃止されました。

川之江と高知を結ぶ道（土佐北街道）

「土佐北街道」とも呼ばれるこのルートは、愛媛県川之江から新宮、馬立を経て笹ヶ峰峠を越え、高知県大豊町立川、本山町などを経て高知城下へと至ります。797年に北山官道として開かれ、江戸時代には土佐藩主山内氏が参勤交代で利用しました。金毘羅参りが盛んになると、土佐から伊予、そして川之江から伊予・土佐街道（金毘羅街道）へ接続するルートとして多くの旅人が利用しました。現在の愛媛県道・高知県道5号川之江大豊線にほぼ相当し、高知自動車道の大豊－川之江間が並行しています。明治時代以降、阿波池田経由の国道32号が整備されると、主要な交通路としての役割は薄れましたが、高知自動車道の整備に伴い拡幅工事が行われています。

徳島と高知を結ぶ道

海沿いの道（土佐浜街道、土佐東街道）

別名「土佐浜街道」または「土佐東街道」と呼ばれるこの道は、徳島藩が整備した阿波五街道の一つです。徳島から立江、羽ノ浦を経て、古庄で那賀川を渡り、桑野、由岐、日和佐、宍喰浦などを経て、高知県側の甲浦へ。そこから室戸、安芸、赤岡などを経て高知に至ります。現在の国道55号がその大部分を担っています。

四ツ足峠越えの道（土佐中街道）

四国山地の四ツ足峠を越えるこの街道は、「土佐中街道」と呼ばれます。海沿いの土佐街道の途中、橘から内陸に入り桑野川沿いを進み、鷲敷からは那賀川沿いに丹生谷地方を抜け、四ツ足峠を越えて高知県側に入ります。高知側では物部川沿いに大栃、美良布、山田を進み、後免などを経て高知に至ります。現在の国道195号に相当します。

土佐街道は、多様なルートを持ち、それぞれの道が地域の歴史と文化を色濃く反映しています。これらの道は、単なる移動手段としてだけでなく、人々の交流や生活を支え、地域間のつながりを深めてきた重要な役割を担っていました。

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