物部川

物部川（ものべがわ）について

高知県の中央部を流れる物部川は、香美市の白髪山を源流とする一級河川です。大小34の支流を集めながら、南国市、香南市、香美市を流れ、土佐湾に注ぎます。流域面積は508平方キロ[[メートル]]で、その約88%を山地が占めています。上流域は奥物部県立自然公園に指定されており、北部には剣山国定公園が隣接しています。

地理

物部川は、白髪山の東面を源流とし、南へ流れます。香美市物部町別府で南西に流れを変え、高知平野東部を通り、香南市吉川町吉原で土佐湾に注ぎます。

名称の由来

かつては「鏡川」と呼ばれていましたが、高知市を流れる川が鏡川と名付けられたため、「物部川」に改名されました。「鏡川」の由来は、「香美郡」の別名である「鏡野」からきており、土御門上皇がこの地を訪れた際、「かがみの」と尋ねたことがきっかけとされています。物部川の「物部」は、飛鳥時代の物部氏の勢力の名残に由来すると考えられています。

自然

地形

物部川は、標高1,770mの白髪山を源とし、上流部は急峻なV字谷を形成しています。永瀬ダムより下流では河岸段丘が続き、杉田ダムより下流では香長平野と呼ばれる広い扇状地が広がっています。特に右岸側は、扇状地性低地が広がっているため、洪水時の浸水想定区域が流域外にまで及ぶこともあります。また、急流河川であるため、降雨時には短時間で急激に流量が増加します。

地質

物部川の本川上流部には仏像構造線が走っており、地質は左岸側の四万十帯と右岸側の秩父帯に分かれます。四万十帯は中生代の砂岩がち互層から成り、秩父帯は古生代から中生代の泥岩、砂岩、凝灰岩層などが分布しています。下流の扇状地には、氾濫によって運ばれた砂礫が堆積しており、河口付近はかつて潟湖だったため軟弱地盤となっています。

気候

物部川流域は太平洋岸式気候で、年間平均気温は約17度と温暖です。6月から9月にかけて降雨が集中し、年間降水量は山間部で2,800mm、平野部で2,400mmを超える多雨地域です。

植生分布

上流から中流にかけてはスギやヒノキが多く、最上流部にはブナやシイノキも分布しています。源流部の白髪谷は水質が良く、ニホンカモシカなどの哺乳類や、ムカシトンボ、カワセミなどが生息しています。また、標高800m以上の渓流にはオオダイガハラサンショウウオやハコネサンショウウオなどが生息しています。永瀬ダムまでの上流区間にはアマゴやタカハヤなどが確認されています。永瀬ダムより下流は落葉樹林が広がり、ヒヨドリ、ニホンザル、オオムラサキなどが生息しています。河道沿いには棚田が広がっており、吉野ダム、杉田ダム付近では水位変動の影響により水生生物の種類は少ないですが、アユやコイなどが放流されています。下流域では、ツルヨシなどの草地やアカメヤナギ、エノキなどの高木林が発達し、タヌキやサギ、ホオジロ、アオジなどの生物が生息しています。また、交互砂州ではヒバリやスズメなどの小鳥、河口付近ではコアジサシやコチドリなどが生息しています。魚類では、アユやヌマチチブなどの回遊魚も遡上しています。

河川景観

物部川には、急峻な渓谷や、野中兼山が築いた山田堰によって形成された平野部など、様々な景観が見られます。別府峡谷は紅葉の名所として知られ、屏風岩、アイノウ釜、紅香橋、ネジレ滝などがあります。また、西熊渓谷では四季折々の渓谷美が楽しめます。轟の滝は落差82mの三段の滝で、「日本の滝100選」にも選ばれています。下流にある町田堰は、夏場に賑わい、兼山の三又は、昔ながらの石積みが残っています。桜づつみ公園は市民の憩いの場として利用されています。

歴史

流域の遺構と歴史

香長平野には、弥生時代からの遺跡や古墳が多く残っています。特に、南国市の田村遺跡群は、高知県を代表する遺跡であり、多くの古墳や竪穴建物などが発掘されています。飛鳥時代には、物部氏の勢力下であったと考えられ、香美市内には物部氏を祭る若一王子宮があります。平安時代初期には国府が置かれ、紀貫之がこの地を治めました。江戸時代には、野中兼山が用水路を建設し、農業を振興させました。用水路は舟運にも利用され、木材や穀物が運ばれました。また、山田堰は、治水対策にも貢献しました。

流域の自治体

高知県：香美市、香南市、南国市

並行する交通

国道195号

利水施設

永瀬ダム

参考文献

国土交通省四国地方整備局河川部-『流域概要紹介-物部川』

外部リンク

国土交通省 高知河川国道事務所
滝・川・渓谷
物部川漁業協同組合
* 物部川清流保全計画

もう一度検索