金毘羅街道

金毘羅街道：信仰と交通の歴史を刻む道

金刀比羅宮（こんぴらさん）への信仰は江戸時代、庶民にも広がり、全国各地から多くの参拝者が訪れるようになりました。この参詣需要に応える形で整備されたのが、金毘羅街道です。複数のルートが存在し、地域によっては「金毘羅往来」とも呼ばれます。特に高松、丸亀、多度津、阿波、伊予・土佐の五街道は「金毘羅五街道」として知られています。

金毘羅五街道と周辺の街道・往来

高松街道（琴平街道）

高松城を起点に、香川県内陸部を経由して琴平に至る街道です。高松藩の保護を受け、整備が進み、宿場町が栄えました。現在では、香川県道266号、香川県道282号、国道32号などがそのルートを継承しています。土器川の中流域は、参拝者が身を清めたことから「祓川」と呼ばれていました。

丸亀街道（金毘羅往来）

丸亀港から琴平に至る比較的平坦な街道で、大阪方面からの参拝者も多く利用しました。延享年間には、大阪と丸亀を結ぶ定期船も就航し、非常に賑わったと伝えられています。現在では、香川県道204号、香川県道4号などがその痕跡を留めています。街道沿いには、太助灯籠や京極船魂神社など、歴史を感じさせる遺構が残されています。

金毘羅往来（岡山方面からのルート）

岡山県岡山市周辺から、早島、茶屋町、藤戸、由加山、児島、下津井を経由し、船で丸亀街道に合流するルートです。岡山藩六官道の一つにも数えられ、国道30号や瀬戸中央[[自動車道]]などが現代版と言えるでしょう。由加神社本宮への参拝と金毘羅参りを組み合わせる「両参り」の風習も残っています。

妹尾金毘羅往来

岡山市中心部から早島へ向かう比較的直線的なルートです。

庭瀬金毘羅往来

商業地を多く経由するルートで、商売をしながら参拝する人が利用しました。特に旧吉備国（備前、備中、備後）域では、このルートを「金毘羅往来」と呼ぶ場合もあります。

吉備津（一宮・真金）金毘羅往来

吉備津彦神社、由加神社本宮、金刀比羅宮の三社を参拝するルートです。旧山陽道を北上し、吉備津神社から南下して庭瀬金毘羅往来に合流します。

撫川以降の金毘羅往来

庭瀬、吉備津両金毘羅往来が合流する撫川から、下津井港を経由して丸亀街道へ至るルートです。

多度津街道

多度津港から善通寺、生野、大麻などを経て琴平に至る街道です。西国・九州からの参拝者も多く利用し、天保年間には丸亀街道を凌ぐ賑わいを見せたと言われています。現在では、香川県道25号、国道319号などがその流れを汲んでいます。

阿波街道

徳島県から讃岐山脈を越えて琴平に至る街道です。阿波池田から猪ノ鼻峠、財田戸川、樅の木峠などを経由するルートは「阿波別街道」とも呼ばれ、明治時代に四国新道として整備されました。現在では国道32号がそのルートの一部を継承しています。また、貞光から三頭峠を越え琴平に至るルートは、現在では国道438号となっています。

伊予・土佐街道

愛媛県から燧灘沿いに豊浜へ、そこから内陸を進んで琴平に至る街道です。伊予、土佐からの参拝者も多く利用し、街道沿いには多くの灯籠などの寄進物があります。現在では国道377号がその流れを汲んでいます。

明治時代以降

明治中期以降、鉄道や自動車の普及により、歩行のための金毘羅街道は衰退していきました。多くの旧街道は県道や国道に指定され、新たな道路が整備されました。しかし、都市開発などにより、旧街道の姿をとどめる区間は少なくなっています。現在、往時の道標などを遺構として見ることができる場所もありますが、移築されている場合もあり、注意が必要です。

まとめ

金毘羅街道は、人々の信仰と交通の歴史を物語る貴重な文化遺産です。現在でも、その一部は道路として利用され、歴史を感じさせる遺構も残されています。金毘羅街道を辿ることで、日本の歴史と文化に触れることができるでしょう。

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