仁淀川

仁淀川（によどがわ）

四国山地を源とする仁淀川は、愛媛県と高知県を流れ、その全長は124kmに及びます。愛媛県内では面河川（おもごがわ）とも呼ばれ、流域面積は1,560km²、四国では吉野川、四万十川に次ぐ規模を誇ります。この川の最大の特徴は、その圧倒的な水質の高さです。2010年には全国1位に輝き、特に水面が青く見える場所は「仁淀ブルー」として知られ、多くの人々を魅了しています。流域人口は約11万人。

名前と歴史

仁淀川の名前の由来には諸説あります。有力な説の一つは、平安時代の皇族、高岳親王が土佐国を訪れた際に、故郷の淀川に似ていることから「仁淀」と名付けたというものです。また、古くは『延喜式』に「贄殿川」として登場し、朝廷への貢ぎ物である鮎が献上されていたという記録もあります。「贄殿」とは、宮中の厨房を指し、各地からの貢ぎ物を納める場所でした。この贄殿川が転じて仁淀川となったという説も有力です。さらに、古代には大神に捧げる酒をこの川で醸造していたことから「神河」（みわがわ）と呼ばれていた時代もあり、それが後に仁淀川に変化したとも言われています。

地理

仁淀川は、四国山地の最高峰である石鎚山に源を発する面河川と、三坂峠から流れる久万川が合流して形成されます。これらの川は、山地を深く刻みながらV字谷を形成し、南下して高知県高知市、土佐市付近で太平洋に注ぎ込みます。三坂峠から高知県越知町までの区間では、国道33号線が川と並走しており、アクセスも比較的容易です。

上流域

上流域は、石鎚国定公園の一部であり、御来光の滝付近から始まる面河川は、紅葉の名所である面河渓を流れます。この地域は険しい山地というよりは盆地に近く、旧柳谷村から仁[[淀川町]]にかけては、仁淀峡谷と呼ばれる深いV字谷を形成しています。この付近には、面河第三ダムや大渡ダムといった水力発電や治水のための施設が多く存在します。ダムより下流では、長者川や土居川、大桐川などの支流が合流し、水量を回復します。県境を越えると、川の名前が面河川から仁淀川へと変わります。

中～下流域

越知町より下流は水量が豊富になり、夏には多くのキャンプ客や釣り人で賑わいます。カヌーや川漁師の小舟がのんびりと浮かぶ風景は、水辺利用率全国1位を誇る仁淀川ならではのものです。また、片岡橋や名越屋橋などの沈下橋も数多く残っており、歴史的な景観を今に伝えています。いの町出来地で上八川川、いの町勝賀瀬で勝賀瀬川と合流すると、川幅はさらに広がり、大河のような様相を呈します。国道33号仁淀川橋付近の河原では、毎年5月に「紙のこいのぼり」が開催され、春から秋にかけては多くのテントが張られます。

河口部

1977年に開通した仁淀川河口大橋は、当初は有料道路でしたが、2001年に無料化されました。この付近は高知県内有数のサーフスポットとして知られ、一年を通してサーファーの姿が見られます。また、シラスウナギ漁も盛んで、漁期には河原にブルーシート製の作業小屋が並びます。近年、土佐市には観光交流施設「南風」が完成し、隣接する新居緑地公園も整備されました。津波対策として避難タワーも設置されています。また、高知龍馬マラソンの折り返し地点としても人気を集めています。

面河水源の森

石鎚山南面、面河渓周辺の森林は、1995年に林野庁により「水源の森百選」の一つ、「面河水源の森」として選定されました。この地域は豊かな自然に恵まれています。

主な支流

仁淀川には、多くの支流があります。主なものとしては、面河川（愛媛県側の別称）、久万川、黒川、長者川、中津川、土居川、安居川、名野川、大桐川、栁瀬川、上八川川、勝賀瀬川、日下川、波介川、宇治川などがあります。

利水施設

流域には、水力発電や治水のためのダムが複数存在します。主なものには、面河第三ダム（四国電力管理）、大渡ダム（国土交通省管理）、加枝ダム（四国電力管理）、筏津ダム（四国電力管理）があります。

主な橋梁

仁淀川には、多くの橋が架かっています。主なものには、仁淀川河口大橋、仁淀川大橋、新仁淀川大橋、仁淀川橋（高知自動車道）、八天大橋、いの大橋、四国旅客鉄道土讃線仁淀川橋梁、仁淀川橋（国道33号）、名越屋橋（沈下橋）、柳瀬橋、鎌井田大橋、横畠橋、横倉橋、寺村橋、上仁淀橋、大渡ダム大橋、別枝大橋、落出大橋、柳谷大橋、矢淵大橋、仁淀川沈下橋などがあります。

主な観光地

仁淀川流域には、多くの観光地があります。特に有名なのは、にこ渕（いの町）、中津川 (仁[[淀川町]])、安居渓谷（仁[[淀川町]]）、仁淀川河口大橋（土佐市）などです。

文学作品

仁淀川を舞台にした文学作品として最も有名なのは、宮尾登美子の自伝的小説「櫂」「春燈」「朱夏」「仁淀川」です。これらの作品は、作者自身の仁淀川流域での生活体験をもとに書かれています。また近年では、有川浩の作品「空の中」にも仁淀川で漁師として生きる人物が登場します。

その他

NHKでは、2012年に「仁淀川 〜青の神秘〜」というドキュメンタリー番組を放送し、仁淀川の美しさや自然の豊かさを紹介しました。

関連事項

仁淀川に関連する項目として、帝国海軍の軽巡洋艦「仁淀」、海上自衛隊の護衛艦「によど」（2代）があります。また、「日本の川一覧」にもその名前が記載されています。

外部リンク

国土交通省河川局の仁淀川水系に関する情報や、仁淀川流域の情報を掲載するポータルサイト、仁淀川漁業協同組合のウェブサイトなどを参照してください。

河川整備基本方針 > 仁淀川水系 - 国土交通省河川局
高知河川国道事務所 - 国土交通省 四国地方整備局
わくわく仁淀川 - 仁淀川わくわく会議
仁淀川お宝総合案内所 - 特定非営利活動法人 仁淀川お宝探偵団
仁淀川ネット - 個人運営サイト
仁淀川漁業協同組合


仁淀川は、その美しい自然と豊かな恵みで、多くの人々に愛される川です。

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