土岐頼武

土岐頼武：美濃を揺るがした守護大名

土岐頼武は、戦国時代を代表する武将の一人であり、美濃国の守護大名として知られています。父は土岐政房、弟には頼芸、治頼、揖斐光親らがおり、次郎と称し、修理大夫の官位にありました。諱は政頼、盛頼とも伝えられています。妻は越前朝倉氏当主・朝倉貞景の娘で、息子に頼純がいました。

頼武の生涯は、家督相続を巡る激しい争いと、それを背景とした美濃国内の動乱によって彩られました。父・政房は当初、次男の頼芸を後継者にしようと意図し、小守護代の長井長弘も頼芸を支持しました。しかし、守護代を務めていた斎藤利良は頼武を推挙し、美濃国内は頼武派と頼芸派に分裂、永正14年(1517年)には両派による激しい合戦に発展しました。この最初の戦いは頼武派の勝利に終わりましたが、頼芸派は尾張に亡命していた前守護代斎藤彦四郎と連携し、反撃の機会を伺っていました。

永正15年(1518年)8月、再び両派の衝突が起こり、今度は頼芸派が勝利を収めました。頼武は利良と共に、利良の親戚筋にあたる越前朝倉氏のもとに亡命。この亡命中に朝倉貞景の娘と結婚したと伝えられています。頼芸派は幕府に働きかけ、頼武の上洛を促す御内書を取り付けましたが、朝倉孝景はこれを無視しました。

頼武が越前に滞在中も、美濃国内は内乱状態が続きました。永正16年(1519年)3月には垂井周辺で激戦が展開され、同年6月には政房が死去します。この事態を受け、朝倉孝景は弟の景高に美濃出陣を命じ、7月には3000の朝倉軍の護衛の下、頼武は美濃へ帰国しました。頼武は、9月の正木合戦、10月の池戸合戦で勝利し、美濃守護の座を奪還。長井長弘は没落し、斎藤彦四郎も失脚しました。

大永2年(1522年)正月、頼武は多治見市の永保寺に禁制を掲げ、その内容は前守護・政房のものと全く同じでした。これは、頼武が政房の意志を継承し、正式な守護職に就いたことを示す重要な証拠となります。その後、頼武の政権は一時的に安定を取り戻しましたが、大永5年(1525年)6月、長井長弘が頼芸を奉じて再び挙兵しました。激しい戦闘の後、頼武は守護所を放棄して逃亡を余儀なくされ、8月には浅井亮政の軍勢が近江から侵攻してきます。頼武は朝倉氏に救援を求め、朝倉宗滴、景職らが軍勢を率いて美濃へ出陣、浅井勢を牽制しました。この内乱は、大永7年(1527年)末に一段落しましたが、その後も美濃の情勢は不安定な状態が続きました。

享禄3年(1530年)、頼武は再び越前に逃れ、頼芸は「濃州太守」と呼ばれるようになりました。朝倉氏の支援を得て美濃へ帰国した頼武は、山県郡大桑城を拠点に、頼芸との対立を続けました。頼芸が父・政房の十七回忌法要を執り行い、自らの正当性を主張したことで、両者の対立はさらに激化しました。頼武は修理大夫に任官し、権威付けのため蘭奢待の切り取りを朝廷に申請し、許可を得ています。8月、朝倉氏や六角氏の援兵を得て攻勢を開始、多芸郡・池田郡から岐阜・関に及ぶ広範囲で合戦が展開され、多くの神社仏閣が焼失しました。最終的に、頼武は病に倒れ、49歳で生涯を閉じました。頼武の死後も、美濃の動乱はしばらく続きました。

頼武の生涯は、家督争い、国内抗争、そして周辺勢力との複雑な外交関係といった、戦国時代の激しい社会状況を反映したものでした。彼の治世は決して平穏なものではありませんでしたが、美濃国における勢力争いに深く関与し、その歴史に大きな足跡を残しました。

もう一度検索