土田駅

土田駅：近江鉄道多賀線の歴史を刻んだ廃駅

滋賀県犬上郡多賀町土田に存在した、近江鉄道多賀線の土田駅。1914年（大正3年）3月8日、多賀線の開業と同時に誕生したこの駅は、太平洋戦争の激化により1943年（昭和18年）10月に不要不急駅として営業を休止しました。戦後の復興期においても再開されることなく、1953年（昭和28年）10月、ついに廃駅となりました。

多賀線は、高宮駅と多賀駅（現在の多賀大社前駅）を結ぶわずか2.5kmの短い路線でした。土田駅の廃止後は、高宮駅と多賀駅（現在の多賀大社前駅）の間に中間駅が存在しない状態が続きましたが、実に54年5ヶ月後の2008年（平成20年）3月15日、高宮駅と多賀大社前駅間にスクリーン駅が開業し、再び中間駅が設置されることとなりました。ただし、スクリーン駅の位置は土田駅とは異なり、高宮駅寄りに1.1kmの位置に設置されています。

土田駅は、単式ホーム1面1線を有する地上駅で、駅舎も併設されていました。廃駅後は、駅舎やプラットホームは完全に撤去され、当時の面影は一切残っていません。現在、駅の跡地は土田南交差点の南西に位置し、線路沿いの排水溝が駅跡地を回り込むように設置されている様子から、かつて駅が存在したことがうかがえます。現在は、踏切の地上設備の一部として利用されているようです。

駅周辺は田畑が広がる静かな場所で、駅跡地の北側には集落があります。南へ進むと、ライスセンターを通り、犬上川に架かる犬上大橋へと至ります。大橋の対岸には滋賀県道543号高宮北落線が走っています。多賀線の列車は、東隣の多賀駅（現在の多賀大社前駅）との間で名神高速道路と立体交差するという特徴がありました。

土田駅の短い歴史は、戦時下の厳しい状況や、戦後の地方交通の変遷を反映しています。廃駅となった現在でも、その存在は近江鉄道多賀線の歴史において重要な位置を占め、地域の人々の記憶の中に深く刻まれていると言えるでしょう。僅か2.5kmの路線に存在した小さな駅でしたが、その歴史は、近江鉄道、ひいては日本の地方鉄道の歴史を語る上で重要な資料となっています。駅舎やプラットホームは残っていませんが、線路沿いの排水溝や周辺の地形などから、かつて駅があったことを偲ぶことができます。この小さな駅の存在は、時代の流れと地域社会の変遷を物語る貴重な証左と言えるでしょう。

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