土肥原・秦徳純協定

土肥原・秦徳純協定について

土肥原・秦徳純協定は、1935年に発生した張北事件を契機に日中間で結ばれた重要な協定です。この協定の名は、日本側の代表であった土肥原賢二と中国側の代表であった秦徳純に由来します。協定は、特に国民革命軍第二十九軍と日本軍との間での緊張を緩和するためのものでした。

張北事件の発生

この協定の背景となる張北事件は、1934年10月に発生しました。この事件では、日本軍の視察団が中国の察哈爾地方を通過中に国民革命軍の衛兵に拘束されるという事態が発生しました。衛兵たちは青龍刀や自動小銃を用いて日本人に対し威圧的な態度を取り、書記生が交渉しようと試みましたが、暴力を振るわれました。解決には日本語を理解する公安局員の介入が必要でした。実は、この事件の背後には第二十九軍の軍長、宋哲元が日本人旅行者に対する保護を拒否するという秘密の命令があったのです。

再発した緊張

この事件の後、関係者は再発防止の誓約を交わしましたが、1935年には再び緊張が高まります。5月30日、日本軍特務機関員の一行が張北に入り、再び衛兵に停車を命じられました。彼らは特務機関の証明書を示しましたが、無効とされ、司令部に連行され、厳重な検査を受けた後に監禁される事態が発生しました。この監禁は宋哲元の命令によるものであり、その背後には彼が持っていた対日強硬姿勢が影響しています。

宋哲元は当時の北中国における強力な軍閥の一人であり、彼の軍隊は日中戦争の前奏ともなる様々な危険因子をはらんでいました。関東軍は、彼の挑発的な行動を受けて、鋭い対抗措置を講じる決定を下しました。

宋哲元の処罰

6月17日、関東軍の幕僚会議にて宋哲元に関する決議がなされました。彼の行動を「匪賊」とみなす姿勢が明確になり、国民政府に対して強硬な姿勢での処罰を求める決定がされました。これにより、翌日には南京政府が宋哲元の罷免を決定しました。

協定内容の詳細

土肥原特務機関長が提出した要求が6月27日に秦徳純により承諾され、協定が結ばれました。協定内容には、第一に張北事件に関して謝罪を行い、責任者を罷免することが含まれています。また、日中間の外交関係に悪影響を及ぼす機関を察哈爾省から撤退させることが求められました。さらに、日本の行為の尊重が明記され、特に察哈爾省においての行動が認められることとなりました。

具体的には、察哈爾省内における飛行場や無線電信の設置が許可され、また特定の地域における軍の撤退や治安維持についての合意が結ばれました。これにより、張家口や張北の地域での軍事的な緊張が緩和されることとなります。

結論

土肥原・秦徳純協定は、日本と中国の関係において緊張を和らげるための意義深い取り組みでした。その後の歴史の中で、両国間の複雑な外交問題を解決するための一歩となり、また、この協定を通じて軍事的な暴力が一時的に緩和されたことも特筆すべき点です。

もう一度検索