在シンガポール日本人

シンガポールにおける日本人の歴史

シンガポールには、多くの日本人が居住しており、その多くは企業からの派遣社員とその家族です。この地における日本人の歴史は、1862年に音吉という人物が初めて居住したことに遡ります。本格的な移住が始まったのは、明治維新後の1870年代でした。

植民地時代

1862年にシンガポールに渡った音吉は、1832年に船乗りとして働いていた際に嵐で漂流し、アメリカで救助された後、イギリスを経て日本へ帰国を試みましたが、鎖国のため叶いませんでした。その後、上海でアヘン戦争にイギリス兵として従軍。イギリスの市民権を得て、1862年にシンガポールへ移住しました。5年後に亡くなり、シンガポールに埋葬されました。

初期の日本人居住者には、からゆきさんとして知られる売春婦が多く含まれていました。最初の売春婦は1870年または1871年に渡航し、1889年には134人が居住していました。1885年から1918年の間、日本政府は東南アジアへの売春婦の移住を黙認していました。当時の日本領事館の記録によれば、450人から600人の日本人の大半が売春婦、斡旋人、または愛人であり、個人の意思を尊重した正式な手続きで居住していた者は20人にも満たなかったとされています。

1885年当時、日本人学校や組織はなく、売春宿の経営者が日本人社会で大きな影響力を持っていました。日清戦争後、日本政府は海外政策を見直し、ヨーロッパ諸国と対等な立場を目指すようになり、1888年以前から日本人墓地として使用されていたセラングーンの土地を、正式に日本人墓地として設置することが許可されました。しかし、依然として日本人社会の中心は売春婦でした。

清水洋と平川均は、東南アジアにおけるからゆきさんの活動を「からゆきさん先導型の経済」と呼び、仲介人や売春宿オーナーがからゆきさんから得た収益で現地の日本人経済の基盤を築いたと指摘しています。売春婦たちは、稼いだお金を他の日本人の事業の資金として貸し出し、服屋、医者、食料品店などを支援していました。日露戦争時には700人以上の売春婦がおり、特にマレーストリート（現在のミドルロード）に集中していました。第一次世界大戦が始まると、ヨーロッパからの輸入が途絶え、日本製品がその代替となりました。これが契機となり、シンガポールの日本人経済は小売業、貿易業へと変化していきました。

政府はマレー半島での売春を排除する計画を立て、シンガポールでは1921年に日本人の売春が禁止されました。しかし、多くの売春は隠れて行われていました。1927年には約126人の売春婦がおり、多くはシンガポールを離れたり、転職していました。また、彼女たちが主な顧客だった仕立屋や美容院も減少し、土地の所有者も少なくなりました。その代わりに貿易商社で働く従業員が増え、1914年に14人だった従業員は1921年には1478人にも増加しました。その後も従業員数は増え続け、1919年には小売業が38.5％、企業や銀行の従業員が28％でしたが、1927年には小売業が9.7％に減少し、企業従業員は62.9％に増加しました。

1933年をピークに、世界恐慌の影響で日本人の人口は減少しましたが、円の切り下げや東南アジアでの日本製品市場の拡大とともに再び増加しました。シンガポールでは漁業も盛んで、1920年には200人だった漁業関係者は、1936年には1752人と、日本人人口の4分の1から3分の1を占めるほどになりました。

第二次世界大戦とその後

日本の敗戦後、1947年に軍人や一般人を含む全ての日本人は帰国し、日本人墓地も荒廃しました。荒廃の原因は熱帯雨林気候の影響もありますが、不法居住者や破壊行為も影響しました。その後、1953年まで居住許可が出たのは外交官とその家族のみでした。一部の日本人は1948年、1949年に上陸許可を得ていましたが、最大2ヶ月間のみでした。1950年代後半には入国規制が緩和され、日本の貿易商社がシンガポール事務所を再開しました。1957年にはシンガポール日本人会が再設立され、日本人墓地の修復も行われました。

シンガポールの独立後

1970年代前半には、日本企業の工場が東南アジアに移転するようになり、日本人の人口が急増しました。1980年代中頃の一般的な日本人は家族で赴任し、父親はマネージャーまたは技術者、配偶者は専業主婦というケースが一般的でした。独身女性も少数いましたが、日本での独身女性は既婚女性との距離をとりがちであるのに対し、シンガポールでは会社と配偶者コミュニティの両方に積極的に参加する傾向がありました。

教育

シンガポールには、日本人向けの教育機関があり、日本人幼稚園（このはな幼稚園）には約400人、日本人学校には約2500人の小・中学生、早稲田渋谷シンガポール校には約500人の高校生が通っています。その他に12の学習塾があり、高校、大学受験対策を行っています。一部の日本人はインターナショナルスクールにも通学しています。

宗教

1922年にシンガポールに天理教教会が建てられました。戦後の天理教のボランティア活動は、日本占領期のマイナスイメージを向上させましたが、日本人の天理教信者の割合はシンガポール人と比べて低く、神道が地理的に離れていても信仰に不利には働かないことを示しました。

天理教の主な競合は創価学会であり、元々は日本人向けでしたが、シンガポールでは特に中国系シンガポール人に対する布教が成功しています。

レジャー

海外在住の日本人ビジネスマンに人気のあるレジャーは、他の国と同様にゴルフです。1970年代に日本人の人口が急増した際、政府に対し既存のゴルフコースの改修や新設の圧力をかけました。シンガポールの上位中産階級も同様に圧力をかけましたが、日本人の要求が最も強かったです。ゴルフ会員権市場は急速に成長し、外国人向けの会員権は在住日本人と日本人観光客によってほとんどが占められました。この時、地元民に対して外国人向けの料金を高くする料金設定も登場しました。在住日本人の中でも所得が低い人は、マレーシアのジョホール州にある安価なゴルフ場を求めて国境を越える傾向があります。

ゴルフ以外には、テニス、水泳、英語・中国語の語学トレーニング、料理教室なども人気があります。

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