在台北中華民国総領事館

在台北中華民国総領事館

在台北中華民国総領事館は、かつて中華民国が日本の統治下にあった台湾の台北市に設置していた総領事館です。その歴史は、台湾における華僑の存在と深く関わっています。

沿革

1895年の下関条約により台湾が日本に割譲された後も、多くの中国人が出稼ぎのために台湾に渡りました。台湾総督府は彼らを制限する法令を施行しましたが、台湾の産業発展には労働力が必要であり、中国国内の生活苦も相まって、台湾への中国人労働者は増加の一途をたどりました。1912年の中華民国建国時には、その数は1万人を超えていました。

台湾の華僑たちはコミュニティを形成するため、同郷会や会館を設立しましたが、これらはあくまで民間組織でした。華僑の間では子供たちの教育問題が深刻化し、1920年代に入ると、華僑たちは北洋政府に領事館の設置を陳情するようになりました。その結果、北洋政府の外交部が日本の外務省に働きかけることとなりました。

中国国民党が主導する北伐が始まると、華僑たちは国民政府に支援を求め、前向きな回答を得ました。黄朝琴という人物がこの問題に尽力したと言われています。1929年、行政院は華僑のために各国に在外公館を増設することを決定し、台湾への領事館設置を承認しました。1930年、林紹楠が在台北総領事に、袁家達が副領事に任命され、台北に総領事館、台南に副領事館を設置することが正式に決定しました。年末には日本との領事館設置交渉が完了し、1931年4月6日、大稲埕六館街に在台北中華民国総領事館が設置されました。

1934年に総領事に就任した郭彝民は、総領事館の庁舎を新たな場所に移転させることを計画しました。彼は東京帝国大学の後輩である地元の有力者、張月澄と親交があり、張月澄が所有する宮前町の邸宅を総領事館の庁舎として賃貸することになりました。この建物は現在、華南銀行円山分行となっています。

1937年7月7日の盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が勃発し、台湾総督府は中国語でのラジオ放送を禁止しました。両国の関係が悪化するにつれ、華僑たちは次々と台湾を離れ、総領事館は業務を縮小せざるを得ませんでした。外交部が帰国命令を出すまでの間、総領事館の職員は華僑の帰国を支援しました。その主な業務は、外国の海運会社と協力して帰国希望者を送り出すことでした。

1938年1月20日、中華民国は日本と断交し、外交部は在台北総領事館に帰国命令を出しました。同年2月1日、帰国する華僑の最後のグループが台湾を去った後、総領事館は閉鎖され、職員も台湾から撤退しました。乙種学習員の高尊彦は日本側に逮捕され、台北刑務所で獄死しました。

汪兆銘政権時代

1940年、日本の傀儡政権である汪兆銘政権が成立し、日本と国交を樹立しました。1941年1月31日、汪兆銘政権は在台北中華民国総領事館を張月澄邸に再設置しました。しかし、1945年に日本が敗戦し、汪兆銘政権が崩壊すると、在台北中華民国総領事館も閉鎖されました。

総領事館の存在は、台湾における華僑の歴史、日中関係の変遷、そして台湾の政治的状況を反映するものでした。

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