在外ロシア正教会

在外ロシア正教会について

概要

在外ロシア正教会（ROCOR）は、1921年にロシア内戦の際に主教を中心に設立された教会の組織です。当初は、白軍の支配下にあるセルビアのカルロヴツィに本部を置きました。この教会の名称は「在外シノド系ロシア正教会」や「ロシア国外のロシア正教会」とも呼ばれていますが、最近の学術研究では「在外ロシア正教会」が一般的に採用されています。

当団体は設立された当初から、モスクワ総主教庁との関係を断ち、ソビエト連邦以外の地域で活動を展開してきました。2007年にはロシア正教会との和解が成立し、参加団体として準自治教会の地位を得ることとなります。現在、在外ロシア正教会はニューヨーク市に本部を構え、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドに信徒が広がっています。

教会全体では約400の集会があり、総信者数は約40万人に及びます。アメリカ国内には232の集会と10の修道院があり、約92,000人の信者のうち9,000人が定期的に教会に通っています。アメリカには在外ロシア正教会以外にも「在米国ギリシャ正教会」や「アメリカ正教会」といった正教会組織も存在しています。

歴史

設立当初、モスクワ総主教ティーホンは無神論的な共産主義政権に対し激しい抗議をしていましたが、物理的に教会の管理が困難になると、他の教区との合同を条件に独自の教会管理局設置を受け入れることとなります。しかし、その新しい管理局もすぐにロシア革命に反発し、帝政復活を叫ぶことになります。これに対抗して、ティーホン総主教は信徒への弾圧が過度であることから、その態度を緩和せざるを得ませんでした。

在外ロシア教会の設立は、主教たちが赤軍の占領から逃れるために必要な対応でもありましたが、設立には様々な反発や疑問が寄せられていました。モスクワの教会体制との関係を断たず、同時にロシア国外にある教区を管理することの正当性も問われていました。特にアメリカのロシア系正教会（北米メトロポリア）は、在外ロシア正教会とは異なる道を選びましたが、その独立性には問題があるとされてきました。

和解への道のり

ソビエト連邦の崩壊後、在外ロシア正教会とモスクワ総主教教会の間で再び和解の話し合いが行われました。2007年5月17日には、両者が法的な合意を交わし、在外ロシア正教会は主流の正教会としての合法性を回復しました。これにより、信徒たちは他の正教会で聖なる儀式を受けることが認められるようになりました。

しかし、和解を拒否する教区も多く残り、現在も活動を続けています。特にアガファンゲル府主教派やヴィタリイ府主教派などがその代表として挙げられます。近年では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて教会内部でも意見対立が顕在化しました。信者の中には、ロシアの行動を正当化する立場とウクライナに同情する立場で分裂する事態が生じています。

現在の状況

この教会は現在も多様な信徒を抱え、ロシア正教会との関係を維持しつつ独自の運営を続けています。これに伴って、モスクワ総主教キリル1世に対する認識にも変化が見られ、教会内では彼を記念することを止めることも許可されるなど、柔軟な対応が求められています。信徒間の意見の相違が教会の今後にどのような影響を及ぼすかが大きな課題となっています。

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