在日イラン人

在日イラン人コミュニティ：激動の軌跡と現代

はじめに

日本に居住するイラン国籍の人々、すなわち在日イラン人コミュニティは、1980年代後半から2000年代初頭にかけて、大きな変遷を遂げました。本稿では、その歴史的背景、コミュニティの形成と変容、そして現在に至るまでを詳細に考察します。

イラン・イラク戦争後の急増とビザ免除協定の終結

1988年のイラン・イラク戦争休戦後、日本とイラン間のビザ相互免除協定を背景に、多くのイラン人が日本へ渡航しました。日本の好景気と比較的高水準の賃金、比較的緩やかな出入国管理が、その要因の一つです。1992年には、在日イラン人の数はピークを迎え、不法滞在者も多数存在しました。しかし、同年、経済状況の悪化や不法滞在者の増加を背景に、日本政府はビザ相互免除協定を終了させ、不法滞在者への取り締まりを強化しました。これにより、在日イラン人の数は劇的に減少しました。

最盛期の在日イラン人像

最盛期の在日イラン人は、中年男性が中心でした。多くは単身で渡航し、家族を伴わないケースが多かったようです。出身地はテヘラン南部地区や東アゼルバイジャン州が多く、ペルシア語話者とアゼルバイジャン語話者が含まれていました。教育水準は他のムスリム諸国からの労働者と比較して低く、建設業に従事する者が多かったと言われています。バブル経済崩壊後は、建設業の雇用機会が減少したため、駅周辺での無店舗小売りに転じる者も増加しました。当時、違法テレホンカードの売買が問題となり、一部のイラン人が非合法な活動に関わっていたという負のイメージも広まりました。

コミュニティ空間の変遷

初期のイラン人コミュニティの拠点は、上野公園や代々木[[公園]]などの公園でした。そこで、イラン製品の販売や仕事の紹介が行われていました。しかし、周辺住民からの苦情や違法行為への取り締まり強化を受け、公園はコミュニティの場としての役割を失っていきました。その後、モスクが新たなコミュニティ空間として機能するようになりました。東京のイラン大使館の礼拝所や日本橋小伝馬町のモスクなどがその役割を果たし、宗教行事だけでなく、ノウルーズなどの祝日にもコミュニティが集まる場となりました。

帰国と社会への影響

在留資格の期限切れ、不許可、または不法滞在摘発により、多くの在日イラン人が帰国しました。最盛期の4万人以上いた在日イラン人の大部分が帰国し、現在ではごく少数となりました。平均滞日年数は4年で、送金した資金はイランでの住宅購入や事業開始などに利用されたケースが多いと推測されます。帰国者への調査では、渡航前は農民や非熟練労働者だった人が、帰国後に自営業を始めるケースが多く見られたそうです。これは、日本での労働経験と送金による資金が、社会流動性に大きく影響したことを示唆しています。

著名なイラン系日本人

芸能界やスポーツ界など、様々な分野で活躍するイラン系日本人も存在します。KENTA、May J.|May_J.、サヘル・ローズなど、日本社会に貢献する人々も少なくありません。これらの著名人の存在は、多文化共生社会の象徴と言えるでしょう。

結論

在日イラン人コミュニティの歴史は、経済状況の変化、出入国管理政策、そしてコミュニティ自身の努力と苦悩が複雑に絡み合ったものです。最盛期と比較して規模は縮小しましたが、残された人々は、日本社会に独自の文化と多様性をもたらし続けています。今後も、彼らの存在と日本社会との関わりは注目に値するでしょう。

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