在日米海軍辻堂演習場

在日米海軍辻堂演習場は、かつて神奈川県の藤沢市および茅ヶ崎市の沿岸部に設置されていた在日米軍の海軍施設です。この地は、江戸時代中期に相州炮術調練場が設けられて以来、軍事演習の場としての歴史を持っていました。

第二次世界大戦後、この演習場は連合国軍に接収され、在日米軍の管理下に入りました。米軍はここで上陸訓練、砲撃、爆破といった様々な演習を実施。特に朝鮮戦争時には、この演習場が上陸訓練の重要な拠点となり、ダグラス・マッカーサー元帥による仁川上陸作戦の成功に繋がったとも言われています。

演習場の区域は拡大され、隣接する茅ヶ崎市の海岸部も含まれるようになりました。この茅ヶ崎海岸区域での演習では、沖合にある烏帽子岩が射撃目標として使用された時期があります。度重なる砲撃により、烏帽子岩はその形状が大きく変化したと伝えられています。

演習場の歴史を見ると、1945年9月に旧横須賀海軍砲術学校辻堂演習場が連合国軍に接収され、翌年10月に初演習が行われました。1950年代に入ると、米軍の演習による漁業被害が国会で議論されるようになります。1951年6月には朝鮮戦争に対応した大規模な上陸演習が始まりました。1952年には、この演習場を米軍の無期限使用施設とする協定が締結され、FAC（施設）番号3106が割り当てられました。この協定で定められた海上演習区域「オーボー第一区域」では、烏帽子岩が直接射撃の目標とされました。これに伴い、漁船の操業が制限される区域や期間が設定されました。

烏帽子岩への射撃訓練は、1953年10月の朝鮮戦争停戦を受けて実質的に終了。1954年4月には日米間の協定が改定され、演習場の名称が「辻堂演習場（茅ケ崎海岸区域）」となり、烏帽子岩を標的としない方針が明確化されました。その後、海上演習区域の名称は「オスカー第一区域」に改められます。そして1959年6月25日、在日米海軍辻堂演習場は接収が解除され、日本に返還されました。

返還された広大な国有地は、大蔵省（当時）の管轄となり、様々な用途で処分が進められました。一部は藤沢市や東京農地事務局へ売却または所管替えされ、学校用地や合同宿舎、日本住宅公団への現物出資、藤沢市への無償貸付などが行われました。特に、公園用地として神奈川県への無償貸付が予定されていた土地を巡っては、「サイエンスランド問題」と呼ばれる騒動が発生しました。

この問題は、神奈川県が公園造成の予算確保に難航する中、当時の神奈川県知事が営利会社「サイエンスランド株式会社」の設立発起人となり、公園計画を断念して同社への国有地払い下げを図ろうとしたものです。営利目的の会社への払い下げや、県へ無償譲渡された土地の転用可能性が低いにも関わらず出資が募集されたことが批判を呼びました。財界の著名人を含む多数が発起人に名を連ねていましたが、県議会からの批判意見書提出、他団体からの土地払い下げ要望、国会での審議などを経て、事態は混迷しました。最終的にサイエンスランドは解散に至り、紆余曲折を経て、当初の予定通り神奈川県によって辻堂海浜公園として整備されました。

現在、旧演習場跡地には、国道134号線やサイクリングロードといった道路網、辻堂団地、湘南工科大学や附属高校、小中学校、養護学校などの学校施設、辻堂海浜公園などの複数の公園、辻堂浄化センターといった行政施設、さらには民間施設の一部などが立地しており、広範囲にわたる複合的な土地利用がなされています。

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