地下室 (ザ・ベースメント・テープス)

ボブ・ディラン&ザ・バンド『地下室（ザ・ベースメント・テープス）』

1975年にリリースされた『地下室（ザ・ベースメント・テープス）』は、ボブ・ディランとザ・バンドによる歴史的な共作アルバムです。このアルバムは、1967年にディランがオートバイ事故で療養中に、ザ・バンドのメンバーと共にニューヨーク州ウッドストック近郊の「ビッグ・ピンク」と呼ばれる家で非公式に録音された音源を基に制作されました。

背景

1966年、ディランは『追憶のハイウェイ61』と『ブロンド・オン・ブロンド』という2枚の重要なアルバムをリリースし、精力的なワールドツアーを行っていました。しかし、7月29日にオートバイ事故を起こし、その後の活動は一時中断を余儀なくされます。この事故を機に、ディランはザ・バンドのメンバーと共同生活を始め、自宅や「ビッグ・ピンク」の地下室で非公式のレコーディング・セッションを開始しました。

レコーディング

セッションは非常にリラックスした雰囲気の中で行われました。トラディショナルな曲からディランのオリジナル曲まで、100曲以上もの楽曲が録音されたと言われています。ディランは、既存の曲に即興で歌詞を付けたり、メンバーが演奏するメロディーに合わせてその場で曲を作ったりしていました。これらのセッションは、ディランの創造性の泉であり、数々の名曲が生まれた場所となりました。

収録曲と影響

アルバムには、ディランとザ・バンドのメンバーが共作した「火の車」や「怒りの涙」などの名曲に加え、「なにもないことが多すぎる」「どこにも行けない」といった楽曲も収録されています。これらの曲は、後に多くのアーティストによってカバーされ、音楽シーンに大きな影響を与えました。

海賊盤と公式リリース

録音の一部は、1968年頃から海賊盤として出回るようになりました。特に有名なのは『グレイト・ホワイト・ワンダー』という海賊盤です。その後、1975年に正式にリリースされる際、モノラルテープからステレオミックスにトラックダウンされ、一部の曲にはオーバーダブが加えられました。アルバムには、ザ・バンドのみで演奏された楽曲も含まれており、ディランは参加していません。

アルバムの評価

『地下室（ザ・ベースメント・テープス）』は、リリース当時から高い評価を受けました。ビルボードのトップLP＆テープチャートで最高7位、全英アルバムチャートで8位を記録し、RIAAによってゴールドディスクにも認定されています。ローリング・ストーン誌の「オールタイム・ベストアルバム500」では292位にランクインしました。このアルバムは、その後のロック音楽のルーツを辿る上で重要な作品とみなされています。

アルバム収録曲

Side 1
1. オッズ・アンド・エンズ
2. オレンジ・ジュース・ブルース
3. 100万ドルさわぎ
4. ヤズー・ストリート・スキャンダル
5. アカプルコへ行こう
6. ケイティは行ってしまった

Side 2
1. ロー・アンド・ビホールド
2. ベッシー・スミス
3. 物干しづな
4. リンゴの木
5. おねがいヘンリー夫人
6. 怒りの涙

Side 3
1. なにもないことが多すぎる
2. おもいぞパンのビン
3. エイント・ノウ・モア・ケイン
4. 堤防決壊（ダウン・イン・ザ・フラッド）
5. ルーベン・リーマス
6. タイニー・モントゴメリー

Side 4
1. どこにも行けない
2. ヘンリーには言うな
3. なにもはなされなかった
4. ドアをあけて
5. 長距離電話交換手
6. 火の車

パーソネル

ボブ・ディラン - アコースティック・ギター、ピアノ、ボーカル
ロビー・ロバートソン - エレキ・ギター、アコースティック・ギター、ドラムス、ボーカル
リチャード・マニュエル - ピアノ、ドラムス、ハーモニカ、ボーカル
リック・ダンコ - エレクトリック・ベース、マンドリン、ボーカル
ガース・ハドソン - オルガン、クラビネット、アコーディオン、テナー・サックス、ピアノ
リヴォン・ヘルム - ドラムス、マンドリン、エレクトリック・ベース、ボーカル


『地下室（ザ・ベースメント・テープス）』は、音楽史において特別な位置を占めるアルバムです。ディランとザ・バンドという才能あふれるミュージシャンたちが、リラックスした環境の中で自由に音楽を創造した結果、生まれたこのアルバムは、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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