地割役

地割役（じわりやく）とは

地割役は、江戸時代の町方において、土地の区画整理や測量、町地の受け渡しに立ち会う役人です。町奉行の管轄下で、町年寄を補佐する役割を担っていました。地割役は、町奉行所の役人や町年寄と共に、町地の受け渡しに立ち会い、土地の測量業務を行いました。

地割役の成立

当初、町方の土地に関する測量業務は、大工頭の木原内匠が町奉行の依頼によって行っていました。しかし、依頼件数が増加したため、木原内匠の親類である木原勘右衛門が、町方地割常役人としてこの業務を引き継ぐことになりました。木原勘右衛門には、日本橋南通一丁目と本石町三丁目に拝領屋敷が与えられましたが、三代目である与右衛門が不行跡により解任されてしまいます。

その後、日本橋の名主であった樽屋三右衛門が、木原氏に代わって地割役を勤めることになりました。樽屋三右衛門は、木原の居宅を拝領し、木原の時代から仕えていた手代たちを召し抱えて業務にあたりました。この地割役は、樽屋の分家として代々三右衛門を名乗り、名主役の樽屋とは区別されていました。

地割役の役割と業務

地割役は、単に土地の区画調査や屋敷の受け渡しに立ち会うだけでなく、火災後の跡地見分も重要な業務でした。火災発生時には、手代や絵図師を派遣し、焼失した土地の区画整理や確定作業を行いました。特に火災が頻発した際には、長期間にわたって担当者を出張させ続ける必要があり、その給金や諸費用は大きな負担となっていたようです。

地割役の待遇と収入

地割役は、町年寄と同様に拝領された屋敷地を経営し、その地代収入を職務遂行の経費としていました。樽屋の地割役は、日本橋の拝領屋敷の他に、須田町二丁目にも土地を拝領しており、その地代収入は年間200両に上りました。これは、当時の役人としては比較的安定した収入であったと考えられます。

地割役の終焉

慶応4年（1868年）には、維新政府により、地割役は町年寄並の扱いとなり、町年寄の補佐的な役割を担うことになりました。これは、地割役の業務が町年寄の業務を補完する上で重要な役割を果たしていたことを示しています。しかし、明治2年（1869年）には、樽三右衛門は町年寄たちと共に免職となり、その後の消息は不明です。

まとめ

地割役は、江戸の町の発展を支えた重要な役人でした。土地の区画整理や測量、町地の受け渡し業務を通して、町の秩序維持に貢献しました。また、火災後の復興においても、その専門知識と経験が活かされ、迅速な復興を支えました。地割役の存在は、江戸の町における行政の一翼を担っていたと言えるでしょう。


参考文献
* 『江戸の町役人』 吉原健一郎著 吉川弘文館 ISBN 978-4-642-06306-7

もう一度検索