地域特別気象中枢

地域特別気象中枢（RSMC）とは

地域特別気象中枢（Regional Specialized Meteorological Centre：RSMC）は、世界気象機関（WMO）の定めた世界気象監視計画（WWW）の一環として、気象情報の作成、収集、配信を専門とする機関の総称です。RSMCは、特定の地域や活動分野に特化した気象情報を担当し、世界各地の気象機関と連携して、気象災害の軽減や国際的な気象協力に貢献しています。

RSMCの種類

RSMCは、その機能によって大きく2つに分類されます。

1. 地域特化型RSMC (Centres with geographical specialization)
特定の地理的範囲を管轄し、その地域内の気象情報の分析・予測を行います。
世界気象中枢（WMC）と国家気象中枢（NMC）の間で、気象資料の形式を調整し、必要な気象データを提供します。
災害時など、管轄地域内の国家気象中枢が機能不全に陥った際には、気象業務を支援し、国際的な人道支援活動を支えます。
他のRSMCと連携し、適切な気象サービスを提供します。

2. 活動特化型RSMC (Centres with activity specialization)
特定の活動分野に特化した気象情報を担当し、熱帯低気圧プログラムや環境緊急対応プログラムなどを支援します。
熱帯低気圧の監視・予報、環境災害時の大気輸送モデルの運用などが主な活動です。

熱帯低気圧プログラム

活動特化型RSMCの重要な役割の一つに、熱帯低気圧プログラムがあります。このプログラムでは、以下の7つの主要な海域における熱帯低気圧の監視と情報提供を行っています。

1. 北大西洋：カリブ海やメキシコ湾を含む海域で、ハリケーンの発生が多い地域です。
2. 太平洋東部：北西太平洋に次いで熱帯低気圧が活発な海域で、メキシコ西部や米国本土に影響を与えます。
3. 太平洋西部：世界で最も熱帯低気圧の活動が活発な海域で、東アジアや東南アジアに大きな影響を与えます。
4. 南西太平洋：オーストラリアを中心にオセアニア諸国に影響を与えます。
5. 南東インド洋：オーストラリアとインドネシアに影響を与える地域です。
6. 南西インド洋：マダガスカルやモザンビークなど、アフリカ東岸諸国に影響を及ぼします。
7. 北インド洋：ベンガル湾とアラビア海に分けられ、特にベンガル湾での活動が活発です。

これらの海域では、年間平均86個の熱帯低気圧が発生し、そのうち47個がハリケーン/タイフーン級にまで発達します。特に、北西太平洋は世界で最も熱帯低気圧の活動が活発な海域であり、中国沿岸部は世界で最も台風の上陸数が多い地域です。

熱帯低気圧警報センター

南半球には、RSMCを補完する6つの主要な熱帯低気圧警報センター（TCWC）があり、各地域で熱帯低気圧の監視・警報業務を担当しています。

環境緊急対応プログラム

環境緊急対応プログラムでは、国境を越える大規模な環境災害に備え、大気の輸送・分散モデルを運用しています。8つの気象センターが連携して、大気汚染の拡散予測や情報提供を行い、原子力災害などの緊急事態にも対応できるように、国際原子力機関（IAEA）とWMOを24時間リアルタイムで接続しています。

各地域のRSMCの例

アメリカ国立ハリケーンセンター：北大西洋と東太平洋を担当。
中部太平洋ハリケーンセンター：中部太平洋を担当。
日本国気象庁：北西太平洋を担当。
インド気象局：ベンガル湾とアラビア海を担当。
フランス気象局レユニオン支部：アフリカ沿岸から東経90度までの南インド洋を担当。
フィジー気象局：東経160度以東、南緯25度以北の南太平洋を担当。

まとめ

地域特別気象中枢（RSMC）は、世界各地の気象情報を提供し、国際的な気象協力の基盤となる重要な機関です。地域特化型と活動特化型に分かれ、それぞれが気象災害の軽減や環境保護に貢献しています。特に、熱帯低気圧の監視や災害時の情報提供は、多くの人々の安全を守る上で不可欠な役割を担っています。

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