地場産業

地場産業とは

地場産業（じばさんぎょう）とは、特定の地域に根ざした中小企業が、地域の資源を用いながら独自の製品を生み出す産業のことを指します。この産業を短く「地場産（じばさん）」とも呼ぶことがあります。また、この概念は「地域産業」とも関連がありますが、地域産業は対象が広がるため、その言葉の使い方には注意が必要です。地場産業には、古くから続く伝統工芸品の製造を含むことが多く、地域の文化や技術を継承しています。

地場産業の特徴

地場産業の大きな特徴は、地域内で技術や労働力、原材料が集積していることです。このような集積によって産地卸が発展し、互いに競争しながら生産・販売活動が行われます。元は地域で産出される原材料を利用した形態が主流でしたが、近年では他地域からの原材料を活用することも増えています。販路についても地域内の需要に限らず、外部市場を対象とする動きが見られ、地域経済の活性化に寄与しています。

戦後に登場した大企業との関係では、通常「地場産業」とは呼ばれないものの、「地域産業」の一部として捉えられることがあります。狭義には製造業を指しますが、農業や観光サービス業なども時にはその範疇に含まれることがあります。

産業政策における地場産業の重要性

地場産業は地元の中小企業の集合体であり、その振興や育成は地方自治体の産業政策において重要な位置を占めています。これを支えるために、地域には産業会館や地場産業センターが設立され、地場産業の製品が駅や空港などの公共スペースに展示されることもあります。

歴史的背景と歩み

地場産業の起源は江戸時代にさかのぼります。各藩の奨励策により繊維製品や家具、漆器、和紙などの産業が発展しました。しかし、多くの地域の産業は時代の変遷に伴って衰退し、わずかの事業者が近隣向けに製造を行うような状況になってしまいました。それでも、現代においても「伝統産業」として残っているものや、ブランド力を持ち続ける産業も存在します。

大正時代に爆発的に発展した生産力は、動力機の普及によるもので、外貨を獲得するための重要な産業でもありました。しかし、戦後牛耳った高度経済成長期には、賃金上昇や国際競争力の低下による影響が見られ、競合する輸入品の流入が増えました。昭和50年代には、労働条件の改善が図られながらも、人手不足が深刻化しました。

また、バブル経済の波に乗れなかった地場産業は、経済の変化を受ける中でオンライン市場など新たな展開を模索しているところです。特に、伝統産業としてのアイデンティティを保ちながら、高単価の少量生産、市場に求められる新たな用途を開発する企業が増えてきています。

地場産業の類型

地場産業はその成り立ちによっていくつかの類型に分けられます。江戸時代からの伝統があるものや、そこから発展した新たな分野、さらには明治以降に西欧からの技術導入によって生まれた産業などがあります。それぞれの産業が地域に根ざしながら、今もその発展を続けています。地場産業は日本各地の歴史や文化を知る上でも大変重要な存在です。

もう一度検索