地塁

地塁（ホルスト）とは

地塁（ちるい）とは、ドイツ語で「Horst」と表記される、地質学における地形の一種です。これは、ほぼ平行に走る複数の断層によって区切られた、周囲よりも相対的に隆起した地塊、あるいはその結果形成された地形を指します。地塁は、山地や台地といった凸状の地形を呈し、その両側面は断層崖によって構成されています。地溝（Graben）と対をなす存在であり、地殻変動によって生じる特有の地形です。

地塁の成因

地塁は、地殻の表面部分が隆起し、さらに断裂することによって形成されると考えられています。具体的には、ほぼ平行に走る2つの断層によって両側の地域が陥没し、その間に挟まれた部分が相対的に隆起することで生じます。この隆起した部分は、周囲の地形に対して一段高くなっており、堤防のような形状を示すため、土木工学の分野では「地堤（ちてい）」とも呼ばれます。

地塁は基本的に正断層によって形成されますが、しばしば地溝と連続して存在することがあります。これは、地殻が引っ張られる力によって断層が生じ、一方が隆起し、もう一方が沈降するという過程を繰り返すことで、地塁と地溝が交互に形成されるためです。

地塁の分類

地塁は、その規模や形状によっていくつかの種類に分類されることがあります。

地塁山地：山地を形成する規模の地塁を指します。周囲の平野部よりも一段高く、山岳地帯を形成します。
地塁山脈：脈状に連続する地塁を指します。複数の地塁が連なり、山脈のような地形を形成します。

地塁の例

世界には、数多くの地塁地形が存在します。以下に代表的な例を挙げます。

ドイツのシュヴァルツヴァルト：ドイツ南西部に位置する山地で、地塁山地の代表例として知られています。森林に覆われた美しい景観が特徴です。
アメリカ合衆国のベイスン・アンド・レンジ：アメリカ西部に広がる広大な地域で、地塁と地溝が交互に分布しています。乾燥した気候と独特な地形が特徴です。
アルタイ山脈：モンゴルと西シベリアにまたがる山脈で、地塁山脈の例として挙げられます。中央アジアの山岳地帯を形成し、豊かな自然が残されています。
テンシャン山脈：カザフスタン、キルギス、中国の国境地帯に連なる山脈で、こちらも地塁山脈の一例です。高山植物や氷河など、変化に富んだ景観が特徴です。

日本国内にも、以下のような地塁地形が存在します。

木曽山脈：長野県と岐阜県にまたがる山脈で、中央アルプスの名でも知られています。急峻な山々と豊かな森林が特徴です。
比良山地：滋賀県に位置する山地で、琵琶湖西岸に連なります。京都市街からも近く、ハイキングコースとしても人気があります。
生駒山地：大阪府と奈良県にまたがる山地で、大阪平野と奈良盆地を隔てています。大阪都市圏に近く、多くの人が訪れます。
鈴鹿山脈：三重県と滋賀県にまたがる山脈で、日本百名山の一つである御在所岳などがあります。
笠置山地：京都府南部に位置する山地で、木津川によって深く浸食されています。
嶺岡山地：千葉県南部に位置する山地で、房総丘陵の一部を形成します。
阿武隈山地：福島県から宮城県に連なる山地で、太平洋岸まで広がっています。
亘理地塁山地：宮城県南部に位置する山地で、太平洋沿岸に位置します。
対馬：長崎県に属する島で、島全体が地塁によって形成されています。

まとめ

地塁は、地殻変動によって生じる隆起した地形であり、その形成には断層が大きく関わっています。地溝と対をなす地形として、地質学的に重要な意味を持っています。世界各地に様々な規模の地塁が見られ、それぞれが独自の景観や特徴を持っています。これらの地形は、地球の歴史や地殻変動のメカニズムを理解する上で、重要な手がかりとなります。

参考文献

旺文社 編『地理・地名事典』旺文社、1992年。ISBN 4-01-077976-4。

関連項目

地溝
断層

外部リンク

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