地獄の顔

『地獄の顔』は、1947年に公開された松竹映画で、水島道太郎が主演を務めました。菊田一夫の小説『長崎』を原作とし、大曽根辰夫が監督を務めています。

あらすじ

物語の主人公は、西脇順三という名のならず者。彼は船乗り上がりの男で、中国の上海を拠点に「蘇州の鉄」という弟分と共に悪事を働いていました。しかし、ある時、傷を負い行き倒れていたところを「栗原先生」に救われ、その出会いをきっかけに足を洗うことを決意します。

栗原は順三を長崎に連れ帰り、自身が運営する育児院「希望の家」で子供たちの世話をさせることにしました。栗原の温情と、そこで働く保母「みち子」の純粋な心に触れることで、順三は徐々に更生への道を歩み始めます。

しかし、過去は順三を容易には解放しません。かつての弟分である「蘇州の鉄」が長崎に現れ、順三をアヘン密輸の仲間に引き込もうと様々な策略を巡らせます。ついには、順三を逃れられない状況へと追い込んでしまいます。

自暴自棄になった順三に、鉄の妻である「お浜」が好意を示すようになります。そのことが原因で、順三は嫉妬に狂った鉄に撃たれてしまいます。瀕死の順三の元に呼ばれたのは、かつて順三が上海に売り飛ばそうと誘拐した娘の父親である「貝塚」という老医師でした。

貝塚は、順三が想像した通り、当初は憤慨し手当をせずに去ろうとします。しかし、その時、教会から流れてくる鐘の音を耳にし、憎しみを越えた愛情を思い起こし、順三に手当を施し命を救います。この出来事を通じて、順三は初めて人間の幸福とは何かをはっきりと理解します。

彼は長崎を出航する船に密輸アヘンが積み込まれ、誘拐された女たちが送り出されようとしていることを知り、悪漢たちの本拠地へと乗り込み、鉄たちと激しい戦いを繰り広げます。重傷を負いながらも、鉄一味は駆けつけた警官隊によって逮捕されます。

死に瀕した傷の痛みに耐えながら、順三は栗原やみち子のいる懐かしい「希望の家」へとたどり着くのでした。

キャスト

西脇順三 - 水島道太郎
蘇州の鉄 - 佐伯秀男
ポイントの譲 - ディック・ミネ
お浜 - 木暮実千代
栗原先生 - 汐路洋
尼僧 - 月丘夢路
貝塚医師 - 齋藤達雄
松波刑事 - 黒井洵
保母・みち子 - 月丘千秋

スタッフ

監督：大曽根辰夫
原作：菊田一夫
音楽：大久保徳二郎

『地獄の顔』は、一人の男の贖罪と再生を描いた感動的な作品であり、当時の社会情勢や人々の価値観を反映した貴重な映画作品と言えるでしょう。

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