地球シミュレータ

地球シミュレータ：日本のスーパーコンピューティングを牽引する巨人

はじめに

地球シミュレータは、日本の[海洋研究開発機構]横浜研究所に設置された、NEC SXシリーズを基盤とするスーパーコンピュータシステムです。2002年の運用開始以来、地球温暖化や地殻変動といった地球規模のシミュレーションを可能にし、日本の科学技術、ひいては世界の科学研究に大きく貢献してきました。本稿では、地球シミュレータの開発経緯、構成、性能、そしてその歴史的意義について詳しく解説します。

開発の経緯と目的

地球シミュレータの開発は、日本のスーパーコンピューティング技術を世界トップレベルに維持・発展させるという強い意志から始まりました。1990年代半ば、日本のスーパーコンピュータ開発は大きな転換期に差し掛かっていました。その中で、地球規模の環境変動予測という喫緊の課題への対応と、バブル経済崩壊後の産業振興という国家的な目標が、巨額の予算を投じた地球シミュレータ開発を後押ししました。初代システムは2002年に稼働を開始し、その圧倒的な計算能力は世界に衝撃を与えました。

システム構成と進化

地球シミュレータは、初代から現在に至るまで、4世代にわたって更新を繰り返してきました。各世代のシステム構成は以下のとおりです。

初代 (2002年)

NEC SX-5をベースとしたシステムで、640ノード、5120CPUを搭載。最大理論性能は40.96TFLOPSに達し、運用開始直後からTOP500ランキングで首位を獲得しました。

第2世代 (2009年)

NEC SX-9をベースに、160ノード、1280CPUを搭載。最大理論性能は131TFLOPSに向上しました。省スペース化、省電力化も実現しました。

第3世代 (2015年)

NEC SX-ACEをベースに、5120ノード、20480コアを搭載。最大理論性能は1.3PFLOPSにまで向上しました。消費電力の大幅な削減にも成功しました。

第4世代 (2021年)

AMD EPYCプロセッサ、NEC SX-Aurora TSUBASA B401-8ベクトルエンジン、NVIDIA A100 GPUというマルチアーキテクチャを採用。5472台のベクトルエンジン（43776コア）を搭載し、最大理論性能は19.5PFLOPSに達しました。異なるアーキテクチャ間の効率的なジョブ割り当てを実現し、汎用性を大幅に向上させました。

性能とベンチマーク

地球シミュレータは、運用開始以来、LINPACKベンチマークにおいて世界最高レベルの性能を記録し続けました。特に初代システムは、他を圧倒的な差で凌駕する計算能力を示し、その名は世界中に知れ渡ることとなりました。各世代のLINPACKベンチマーク結果や、他のベンチマークテストの結果は、地球シミュレータの進化と高性能を裏付けるものです。

運用と利用

地球シミュレータは、地球科学分野にとどまらず、分子動力学、材料科学、AI、機械学習など、幅広い分野の研究に利用されています。日本の学術研究ネットワークSINETへの接続により、国内外の研究者にとって貴重な計算資源となっています。また、Fortran、C、C++などのプログラミング言語に対応し、様々なソフトウェアが利用可能です。

維持費用

地球シミュレータのような大規模なスーパーコンピュータシステムの維持には、莫大な費用が必要です。電気代、保守費用、その他ランニングコストを含め、年間数十億円規模の維持費用が必要となります。これは、高性能を維持するための高度な技術と、膨大な電力消費に起因するものです。

まとめ

地球シミュレータは、日本のスーパーコンピュータ技術の粋を集めた、世界をリードする計算機システムです。その圧倒的な計算能力は、地球科学のみならず、様々な分野の科学技術の発展に貢献してきました。今後も、地球シミュレータは、科学技術の進歩を支える重要な役割を担っていくことでしょう。

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