地球以外における地震

地球外の地震について

地震とは、一般的に地球の地殻内で発生する振動現象を指しますが、実はこの現象は地球に限らず、他の天体でも観測されています。本稿では、月、火星、金星、太陽、恒星といった天体における地震について、それぞれの特徴や発生メカニズム、規模などを詳しく解説します。

月

月における地震は「月震（moonquake）」と呼ばれます。アポロ計画で宇宙飛行士が設置した地震計によってその存在が確認されました。月震は地球の地震に比べて規模は小さいものの、1時間近く振動が続くことがあります。

月震は大きく分けて、深発月震、浅発月震、隕石衝突による月震、熱月震の4種類に分類できます。深発月震、隕石衝突による月震、熱月震は比較的穏やかですが、浅発月震はマグニチュード5.5に達することもあります。アポロ計画による観測期間中には、28回の浅発月震が記録されています。

火星

火星における地震は「火震（marsquake）」と呼ばれます。近年の研究では、火星のプレート構造から、火震は100万年に1度程度しか発生しないと考えられています。初めて火震が検出されたのは2019年4月6日で、NASAの探査機インサイトによって観測されました。インサイトのミッションには、火震の観測も重要な目的の一つとして含まれていました。

金星

金星における地震は「Venusquake」と呼ばれています。金星の地震は、地すべりが原因で発生していると考えられています。1990年11月に探査機マゼランが地すべりの痕跡と思われる画像を捉えており、1991年6月23日には、長さ24〜38kmにも及ぶ地すべりが、アフロディーテ大陸の南緯2度、東経74度の地点で確認されています。この地域には断層が存在していることもわかっています。

太陽

太陽における振動は「日震（sunquake）」と呼ばれ、この現象を研究する学問は日震学（helioseismology）と呼ばれます。日震によって発生する地震波は、光球から時速約35,406kmで広がり、最速のものでは時速402,336kmにも達します。

1996年7月9日には、太陽フレアX2.6等級の発生に伴い、日震の地震波が観測されました。この地震波の規模は、コロナ質量放出に匹敵するほどで、科学雑誌『ネイチャー』によると、そのエネルギーは地球の地震のマグニチュード11.3に相当するとされています。日震は、サンフランシスコ地震の約4万倍のエネルギーを放出し、その伝播距離も地球の地震とは比較にならないほど広大です。この日震は、約1兆トンのTNT爆薬、または原子爆弾の200万倍のエネルギーに匹敵するとも言われています。しかし、なぜ太陽フレアがX線等級2.6程度でもこれほど巨大な地震波を生じさせるのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。

太陽観測衛星SOHOは、ミッション中に日震を記録しています。

恒星・中性子星

恒星や中性子星における振動は「星震（starquake）」と呼ばれ、この現象を研究する学問は星震学（asteroseismology）と呼ばれます。観測史上最大の星震は、2004年12月27日に起きたSGR 1806-20というマグネターで発生したもので、マグニチュード32にも及ぶと推定されています。この星震は5万光年離れた地球でもガンマ線が観測されたほどで、もし地球が10光年以内に位置していたら、大量絶滅が起きていた可能性も指摘されています。


このように、地震は地球だけでなく、宇宙の様々な天体でも観測される普遍的な現象であることがわかります。それぞれの天体で地震の規模や発生メカニズムは異なりますが、いずれも天体の構造や活動を理解する上で重要な情報を提供してくれます。

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