地球光

地球光 - アーサー・C・クラーク

概要

『地球光』は、イギリスの著名なSF作家アーサー・C・クラークによる長編小説であり、地球を舞台にした科学とサスペンスが融合した物語です。この作品では、未来の月面における重金属の秘密漏洩事件を追う主人公、サドラーの視点を通して、複雑に絡む人間関係と宇宙の謎が描かれます。

あらすじ

物語は、地球から離れた人類が月や他の惑星に進出した未来の時代から始まります。地球政府は、鉛やプラチナ、タングステンなどの貴重な金属資源を巡って、惑星連合と対立しています。地球は豊富な重金属資源に恵まれている一方で、惑星連合は高度な科学技術を持っていました。そこで、地球政府は重金属の輸出量を減少させる決定を下しました。しかしその矢先、月面で新たな鉱脈が発見され、その情報が惑星連合側に流出したことが発覚しました。

無線通信や郵便物は厳しく管理されているため、情報漏洩の手段は限られています。秘密情報部員のサドラーは、会計検査員として天文台へ派遣され、情報を漏らした犯人を探し始めます。月面の天文台には、観測部門の他にも様々な部門が存在し、60人以上の職員が勤務しています。サドラーは疑念を抱かれないよう、周囲に注意を払いながら行動し、職員たちとの会話を通じて情報を収集しようとします。

月面からの情報流出の手段は、徒歩、月面車、そしてモノレールのいずれかであると考えられます。サドラーは、モノレールでセントラル・シティへ向かう過程で疑わしい行動をする者を見つけようとしました。その途中、飛行禁止区域に宇宙船が突入し、天体写真に影響を及ぼすという事件が発生します。この事態によって、彼の捜査はさらに複雑になっていきます。

志を同じくするジェミスンとホイーラーは、雨の海にある鉱山に関する情報を探ろうとし、この過程で要塞化された鉱山の存在や、地球政府による新兵器の開発が進められていることを知ることになります。新たな武器が開発される中、惑星連合も同じく強力な戦闘艦を建造し、双方の緊張が高まる中、サドラーは自らの捜査が行き詰まることを感じ始めました。サドラーは、彼が求めていた情報漏洩者が天文台の内部には存在しないのではないかという疑念を抱き始めます。

この状況下で、最後通牒が惑星連合から発せられ、地球は天文台の機材を避難させる必要に迫られます。戦争の危機が迫りつつある中で、サドラーの捜査はさらなる問題に直面しました。彼は重要人物、ステファンソンを月面の要塞へ送り届ける任務を託され、再び雨の海へと向かいます。その道中、彼らは故障や様々な困難に直面し、さらには惑星連合との壮絶な戦闘も繰り広げられます。

戦いの結果、地球側は勝利を収めつつも、多くの命が失われました。戦後、サドラーは、以前から探し続けていた情報漏洩者の正体を知ることができる機会を得ます。彼が向かった先で出会ったのは、元惑星連合の戦闘艦の司令官であり、その男は自らが天文学者とともに行なった秘密の通信行為を告白します。

重要人物

• - バートラム・サドラー: 本作の主人公。中央情報局の秘密情報部員。
• - マクローリン教授: 月面天文台の所長。小柄な外見ながらも、行動力がある。
• - ロバート・モールトン博士: 分光学課長であり、科学者としての知識を持つ。
• - シドニー・ジェミスン: 月面車の操縦技術に優れた助手。
• - カール・ステファンソン: 地球の物理学者で、要塞の防御兵器を開発した。

総評

『地球光』は、未来の宇宙を舞台にしたサスペンス溢れるSF小説であり、解決されないままのミステリーと人間ドラマが絡み合う魅力的な作品です。クラークの描く世界は、読み応えのあるストーリーとともに、深い考察を促します。

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