月面車

月面車とは

月面車（げつめんしゃ）、またはルナー・ローバーとは、月面を走行する目的で設計された自動車を指します。2023年現在、月面車を運用したのはソビエト連邦、アメリカ、そして中国の3カ国に限られています。

ソビエト連邦の月面車

ソビエト連邦は、ルナ計画という月の探査計画の一環として、アメリカに先駆けて月面車を投入しました。1970年11月にルナ17号がルノホート1号を月に送信し、その後1973年にはルナ21号がルノホート2号を月に運びました。元々は有人月面探査のために開発されたものでしたが、有人ミッションのスケジュールが遅れたため、無人走行車での運用に変更されました。

ルノホートのデザインは、4輪バギーカーとは異なり、丼鉢の形に8つの車輪が配置されており、各種の観測機器を搭載しています。これには、ビデオカメラやX線スペクトロメーターなどが含まれ、太陽電池によるバッテリー充電機能を持つため、長期間の運用が可能でした。ルノホート1号は11ヶ月間で10km以上を走行し、ルノホート2号は4ヶ月間で37km以上を走行しました。

さらに後の段階で、ルノホート3号と4号が計画されましたが、1974年の有人探査計画が中止されたため、打ち上げは行われませんでした。その技術は後に、1986年のチェルノブイリ原発事故の復旧活動でも利用されることとなりました。

アメリカの月面車

アメリカでは、アポロ計画において初の有人月面自動車が投入されました。設計費用は5000万ドル、ポルシェが設計を担当し、ボーイングが製造しました。車両は全長3m、全幅1.8m、重量200kgであり、1/4馬力のモーターを4つの車輪に内蔵して、合計1馬力を発揮しました。電源は銀亜鉛電池と太陽電池を使用し、乗員は最大2名でした。この車両はアポロ15号から17号までのミッションで、宇宙飛行士の移動やサンプルの運搬に活用されました。

月面の厳しい環境に対応しており、最高速度は16km/hに達しました。特にアポロ17号での走行距離は36kmに及びました。

中国の月面車

2013年には、中国の嫦娥3号が「玉兎号」という無人月面車を月に送り込みました。玉兎号は土の採取や地質の調査を行うために設計され、太陽光パネルに加えて、非常に寒冷な月の夜を越えるために30年間の長期運用が可能な原子力電池を搭載しています。着陸後の12月15日から活動を開始しましたが、トラブルが発生し、2014年には自走できなくなりました。それでも観測機器は稼働し続け、2016年に活動が停止されました。

さらに、嫦娥4号によって2019年には月の裏側に着陸し、玉兎2号が地下調査を行いました。これにより、月の裏側における探査が実現しました。

日本の月面車

日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）は、将来的な月面探査に向けて、無人の小型実験車の研究を進めています。また、トヨタ自動車との共同開発により、有人ローバのプロジェクトも進行中です。この有人ローバは非常に大きく、居住空間を持ち、長距離走行が可能で、2029年の打ち上げを目指しています。

その他の国の月面車

現在、ロシアはルナグローブ計画の一環として月探査に取り組んでいます。また、インドではチャンドラヤーン3号の成功により、無人月面車「プラギャン」が月面に投入されました。

月面車の未来

月面車は、各国での月探査の重要な要素となっています。NASAは依然として技術開発を続けており、コンテストなどを通じて新しい技術の導入を図っています。月面車は、今後の宇宙活動において非常に期待される存在といえるでしょう。

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