坂川鉄道

坂川鉄道とは

坂川鉄道は、かつて岐阜県恵那郡坂下町（現在の中津川市）の新坂下駅と、恵那郡川上村（現在の中津川市）の丸野駅を結んでいた鉄道事業者です。本社は川上村にありました。この路線は、木材運搬を目的とした森林鉄道としての側面も持ち、同時に旅客輸送も行っていました。

路線概要

坂川鉄道の路線は、木曽川の支流である川上川沿いに敷設されていました。森林鉄道として木材の運搬が主な目的でしたが、住民の足としてトロッコを利用した旅客輸送も行われており、1日に3往復程度運行していました。丸野駅からは坂下森林鉄道、途中駅の奥屋駅からは田立森林鉄道が接続していました。運営は川上村と、株式の過半数を保有していた宮内省によって行われていました。これは、周辺の森林が神宮林（神宮備林）の一部であったためです。

路線データ（廃止時）
路線距離：新坂下駅 - 丸野駅間 10.5km
旅客営業区間：新坂下駅 - 奥屋駅間 8.0km
軌間：762mm
駅数：6駅（起終点駅含む）
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
動力：蒸気、のちに内燃機関を併用
閉塞方式：タブレット閉塞式

歴史

坂川鉄道は、1924年（大正13年）に鉄道免許状が下付され、同年8月には株式会社が設立されました。1926年（大正15年）12月12日に新坂下駅から丸野駅までの路線が開通し、1928年（昭和3年）には内燃機関も併用されるようになりました。しかし、1944年（昭和19年）には廃止され、林野局に譲渡されて坂下森林鉄道の一部となりました。その後、1956年（昭和31年）に旧坂川鉄道の区間は廃止され、1958年（昭和33年）には田立森林鉄道、1961年（昭和36年）には坂下森林鉄道も全線廃止となりました。

鉄道用地の取得においては、買収価格を巡って地主との交渉が難航しました。最終的には、町の有力者が仲介に入ることで決着しましたが、その際の条件が口約束であったため、廃線後に問題が再燃したというエピソードも残っています。

駅一覧

新坂下駅
稲荷堂駅
上大門駅
森平駅
奥屋駅
丸野駅（貨物駅）

新坂下駅は国鉄中央本線坂下駅の東側に位置していました。奥屋駅は濃飛バス夕森線の「奥屋」バス停付近、丸野駅は夕森公園付近にありました。

接続路線

新坂下駅：国鉄中央本線（坂下駅）

車両

坂川鉄道では、ドイツのコッペル社製の蒸気機関車2両（1号・2号）が使用されていました。山林地帯を走行するため、煙突から火の粉が出ないように特殊な形状をしていました。廃線後は田立森林鉄道で使用され、1952年（昭和27年）に廃車されました。

現在の状況

現在、坂川鉄道の路線跡は、濃飛バス夕森線がその役割を引き継いでいます。終点の丸野駅付近にある夕森公園には、当時の橋梁の一部が保存されており、ディーゼル機関車と貨車が展示されています。ただし、これらの車両は当地で使用されたものではなく、長野県の森林鉄道で使用されていたものです。

坂下森林鉄道

坂下森林鉄道は、坂川鉄道の丸野駅から奥三界岳の麓にかけて延びていた森林鉄道で、長野営林局坂下営林署が運営していました。1926年（大正15年）に開業し、1944年（昭和19年）に坂川鉄道の廃止に伴い路線を継承し、路線距離は19.2kmになりました。1956年（昭和31年）に旧坂川鉄道の区間を廃止し、1961年（昭和36年）に全線廃止となりました。

田立森林鉄道

田立森林鉄道は、坂川鉄道の奥屋駅から岐阜県と長野県の県境である川上峠（現在の長野県木曽郡南木曽町）にかけて延びていた森林鉄道で、長野営林局坂下営林署が運営していました。1933年（昭和8年）に開業し、1958年（昭和33年）に廃止されました。

その他の情報

坂川鉄道が開業する前には、飛騨索道という貨物専用の索道があり、物資輸送に利用されていました。

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』7 東海、新潮社、2008年。
小熊米雄『日本の森林鉄道』プレスアイゼンバーン、1989年

関連項目

日本の廃止[[鉄道路線一覧]]
廃線

外部リンク

鎌田宮雄『ふるさと坂下』1984年写真、時刻表史料

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