神宮備林

神宮備林とは

神宮備林（じんぐうびりん）は、伊勢神宮の式年遷宮に必要なヒノキを安定的に供給するために、特別な目的で管理されていた森林区域です。かつて帝室林野局（現在の宮内庁、林野庁）が、一般の森林とは区別して管理していました。現在の長野県木曽郡と岐阜県中津川市にまたがる阿寺山地に位置しています。

概要

木曽山林の歴史

江戸時代、木曽山林は尾張藩によって厳しく管理されていました。1610年頃から名古屋城などの建築用材として大量の木材が伐採されましたが、その後、尾張藩は伐採を厳しく制限し、1624年以降、「巣山」「留山」「鞘山」といった保全区域を設定しました。明治時代に入ると、木曽山林は官林となり、1888年には御料林に編入されました。

神宮備林の誕生

御料林の主な目的は、木材の生産と収益の確保でしたが、伊勢神宮の式年遷宮に必要なヒノキを安定的に供給する必要がありました。そのため、1906年、御料林の一部を神宮備林として指定しました。当初、備林は8,434ヘクタールで、うち1,960ヘクタールを永久備林、6,474ヘクタールを臨時備林としました。

式年遷宮と御杣山

伊勢神宮の式年遷宮は、天武天皇の時代に始まったとされています。当初、用材は神路山や高倉山など神宮が所有する森林から伐り出されていましたが、適木の不足により、御杣山は近隣の山に移り、江戸時代中期以降は、そのほとんどが木曽から供給されるようになりました。

備林の再編

1931年から、神宮備林の実地調査が行われ、1934年に施業案が改訂されました。これにより、永久備林は第一備林として4,484ヘクタールに拡大、臨時備林は第二備林1,777ヘクタールと第三備林1,965ヘクタールに分割されました。これらの地域は、長野県木曽郡の上松町、王滝村、大桑村、そして岐阜県中津川市の加子母・付知町などにまたがっています。

その後の利用

神宮備林からは、姫路城の「昭和の大修理」をはじめ、歴史的な木造建造物の修復にも木材が供給されました。しかし、1947年の林政統一により、神宮備林の制度は廃止され、国有林に編入されました。現在では、特別な需要がある場合にのみ、択伐が行われています。

歴史

1709年（宝永6年）：第47回式年遷宮で木曽山湯舟沢のヒノキが使用される。
1888年（明治22年）：帝室林野局が御料林を設定。
1906年（明治39年）：神宮備林制度が制定され、御料林の一部が神宮備林に指定される。
1947年（昭和22年）：神宮備林の指定が解除され、国有林の一部となる。

備考

伊勢神宮は、三重県伊勢市に宮域林を所有しており、1923年に「神宮森林経営計画」を策定し、造林を進めています。2013年の第62回遷宮では、用材の約2割を宮域林から供給しました。
熱田神宮にも「熱田神宮備林」（愛知県東栄町）があります。

関連項目

伊勢神宮
木曽谷
裏木曽
赤沢自然休養林
木曽森林鉄道
付知森林鉄道
北恵那鉄道線
坂川鉄道
木曽五木
東濃ひのき
護山神社
阿寺川

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