坂東家橘

坂東家橘（ばんどう かきつ）は、歌舞伎役者の名跡の一つであり、その屋号は橘屋です。定紋には根割り橘を、替紋には渦巻を用いています。

この名跡の起源は、江戸時代から明治時代にかけて市村座の座元を務めていた五代目市村家橘に遡ります。五代目市村家橘は、明治5年に市村座の経営権を手放すこととなり、その際に、市村座との関わりが深い「市村」の姓を「坂東」に改めたのが、坂東家橘の始まりです。

しかし、初代坂東家橘の養子である二代目坂東家橘の時代になると、再び姓を「市村」に戻しています。この二代目坂東家橘は、複雑な出自を持ち、実父は明治政府の外交顧問を務めたチャールズ・ルジャンドル、実母は旧福井藩藩主松平慶永の庶子である池田絲でした。

初代坂東家橘は、十三代目市村羽左衛門の弟であり、元々は三代目市村竹松を名乗っていました。その後、十四代目市村羽左衛門（役者としては五代目市村家橘）を経て、初代坂東家橘を襲名しています。生没年は1847年から1893年です。

一方、二代目坂東家橘は、初代の養子であり、坂東竹松から二代目坂東家橘、さらに六代目市村家橘、そして最終的に十五代目市村羽左衛門を襲名しています。生没年は1874年から1945年です。このことから、坂東家橘の名跡は、市村家橘との深い繋がりの中で受け継がれてきたことがわかります。

坂東家橘の歴史は、歌舞伎界における名跡の変遷や、役者たちの複雑な人間関係を映し出す鏡と言えるでしょう。特に、市村座という由緒ある劇場との関係は、この名跡の重みを物語っています。

関連事項として、市村家橘も参照すると、より深く理解することができます。

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