坂東彦三郎 (6代目)

六代目坂東彦三郎（1886年10月12日 - 1938年12月28日）は、明治から昭和にかけて活躍した歌舞伎役者です。屋号を音羽屋と称し、定紋は鶴の丸、替紋は八重片喰を用いていました。俳名としては、薪水、梅朝、楽善などを用いています。本名は坂東英造です。

生い立ちと初期の芸歴

五代目尾上菊五郎と、元柳橋の芸妓であった秋田ぎんとの間に、三男として東京・日本橋浜町で生まれました。幼少の頃より歌舞伎の世界に入り、1896年1月に尾上英造を名乗り初舞台を踏みました。その後、1903年3月には九代目市川團十郎の推薦により、歌舞伎座にて六代目尾上榮三郎を襲名しました。

坂東彦三郎襲名と晩年

六代目尾上榮三郎襲名から6年後、五代目坂東彦三郎家の養子となり、1915年4月に市村座で六代目坂東彦三郎を襲名しました。以降、兄である六代目尾上菊五郎の一座で、脇役として重要な役割を担い続けました。歌舞伎の歴史に深く精通しており、その知識を活かして後進の指導にも力を注ぎました。墓所は青山霊園と江戸川区の大雲寺にあります。

芸風と当たり役

技巧に走ることなく、風格のある大きな芸風が特徴でした。

『助六』の意休、くわんぺら門兵衛
『近江源氏先陣館』「盛綱陣屋」の和田兵衛
『棒縛り』の大名

これらの役どころは、彼の芸の深さを物語っています。

家族

実父は五代目尾上菊五郎、兄には六代目尾上梅幸と六代目尾上菊五郎がいます。妻は二人おり、一人は二代目市川團右衛門の妹であるしゅう、もう一人は新橋の元芸妓で、桂太郎の愛妾であったお鯉の二代目として知られる君です。君は後に西園寺公望の愛妾となり、その後彦三郎と結ばれました。子には十七代目市村羽左衛門がいます。

人物とエピソード

歌舞伎役者としての活動だけでなく、時計愛好家としても知られていました。以下のようなエピソードが残っています。

大向こうから「大時計」と掛け声がかけられたことがありました。
1920年の時の記念日発足に際し、東京天文台長と共に東京市内の時計の正確さを調査する「市内時計巡検」を行いました。逓信省構内郵便局の時計の誤差を指摘したことは、当時新聞にも掲載されました。
国立科学博物館には、彼が使用していた標準時計が常設展示されています。
東京天文台の標準時計を自宅にも設置し、NHKラジオの時報の誤差を毎日報告していたという逸話があります。

これらのエピソードからも、彼の真面目な人柄と、物事に対する探究心がうかがえます。

関連事項

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