坂部城

坂部城の歴史と遺跡

坂部城（さかべじょう）は、愛知県知多郡阿久比町に位置する歴史ある城跡です。阿久比川が流れる知多半島北部に築かれたこの城は、約400年前にさかのぼる存在であり、現在では阿久比町の文化財として保護されています。

城の位置と構造

坂部城は、阿久比川の西岸にある台地の末端部、城山と呼ばれる場所に位置していました。その地形から、平らな本丸を持つ平城として構造されています。歴史的文献には、「坂部村にあり、その跡は東西四十間、南北五十間の規模である」と記されており、城の広さや形も当時の状況を反映したものでした。城の築城主は久松定益とされ、この地域の歴史に大きな影響を与えました。

歴史的背景

坂部城は、数々の文献でその存在が確認されています。特に『尾張志』には、「久松佐渡守菅原俊勝の居城なり」と記されているように、彼の支配下で大きな役割を果たしていました。また、徳川家康の生母である於大の方がこの城に移り住み、彼女の存在も城の歴史に影響を与えています。於大の方は、家康との手紙のやり取りを通して深い絆を育んでいましたが、やがて悲劇的な離別を経験し、その後に坂部城で感動の再会を果たすこととなります。

そうした人間模様を背景に、時代は進み、天正5年には久松信俊が織田信長から疑いをかけられ、自ら命を絶つという出来事がありました。この結果、坂部城もまた、信長の家臣佐久間信盛によって攻撃を受け、落城へと至りました。このように、坂部城は歴史上の激動に翻弄されながらも、その存在を保たれてきたのです。

現在の状況

坂部城跡は、現在も貴重な文化遺産として保存されています。1983年に建設された阿久比町立図書館は、元々の城跡に近接しており、発掘調査は1982年に行われました。この発掘により、城の規模についても新たな情報が得られました。具体的には、城の実際の広さは東西36m、南北54mであったとされています。遺跡の西側と南側には、かつての空堀が残存しており、訪れた人々に城の歴史を感じさせます。

さらに、1988年にはこの地が阿久比町指定の文化財（史跡）に登録され、1994年には阿久比町で唯一の史跡としての位置を確立しました。現在、坂部城跡は美しく整備された城山公園として親しまれており、周囲の住宅地との調和も取られています。また、北方には久松家の菩提寺である洞雲院があり、久松定益や久松俊勝の墓、於大の方の遺髪墓も立つ歴史的な名所です。

所在地とアクセス

坂部城跡は、愛知県知多郡阿久比町大字卯坂字栗之木谷32番地に位置します。名鉄河和線の坂部駅から南西方向に約500メートルの距離にあり、訪れやすい立地となっています。歴史を感じながらの散策に最適なスポットです。

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