於大の方

於大の方（おだいのかた）

於大の方は、戦国時代から安土桃山時代にかけての重要な歴史的人物であり、松平広忠の正室、そして徳川家康の母として知られています。本名は「大」または「太」、または「たい」とも呼ばれ、最晩年には出家し伝通院と称しました。彼女の生涯は、歴史的な背景の中での波乱に満ちたものでした。

生い立ち

享禄元年（1528年）、尾張国（現在の愛知県知多郡）に位置する水野忠政の元に生まれました。忠政は自身の居城である緒川城で、妻である華陽院（於富）との間に彼女を授かりました。彼女の誕生に関しては、いくつかの説が存在しますが、父の忠政は三河国にも所領を持ち、松平清康の求めで于知（於富）を離婚させて清康に嫁がせたとされています。

その後、忠政は天文10年（1541年）に、松平広忠と於大との婚姻を取り計ります。天文11年には彼女は広忠の長男、竹千代（後の家康）を岡崎城で出産しました。このときの彼女の思いは、赤子の長生きを祈念して妙心寺に銅像を奉納することで表れています。

離婚と再婚

しかし、彼女の人生は思い通りにはいかなかった。天文12年、父の忠政が死去すると、彼女は離婚を強いられ、水野氏に戻されました。こうした背景には、松平家と今川氏との関係が影響を与えていたことが考えられます。

天文16年（1547年）には再婚し、久松俊勝の妻となりました。この結婚は水野氏と松平氏の関係を強化する目的があったと言われています。俊勝との間には３男４女をもうけ、家康とも音信不通になることはありませんでした。

家康との関係

永禄3年（1560年）、家康が自立する際には、夫の俊勝と共に家康を迎え入れました。俊勝は家康に仕官し、先代を向かえることになります。家康の出世を支えつつ、自らの子供たちも松平姓を名乗り、家康に仕えることとなります。

転機は天正12年（1584年）、彼女の長男・定勝が羽柴秀吉の養子として迎え入れられる噂が立ちましたが、於大はこれに反対し、家康もその意に従いました。

晩年と死去

於大の最晩年は平穏であったとは言えません。天正3年には兄が家康に殺され、水野家は滅亡の危機に瀕しました。その後、彼女は俊勝を失った後、剃髪し伝通院と呼ばれるようになります。慶長7年には、上洛して豊国神社で徳川氏の敵意のなさを示しました。

そして同年8月29日、伏見城で生涯を閉じ、75歳で世を去ります。彼女の遺骨は翌年、江戸の傳通院に埋葬されました。

文化的影響

於大の方は、近年の日本のテレビドラマや映画で取り上げられ、多くの作品に登場しています。その中には、1983年のNHK大河ドラマ『徳川家康』や、2023年の『どうする家康』などがあります。また、彼女をモデルにした観光マスコット「おだいちゃん」も生まれ、地域の文化に貢献しています。

まとめ

於大の方は戦国時代の中で、多くの波乱を経験し、強い意志を持った女性でした。彼女の存在は徳川家康の人生に大きな影響を与えただけでなく、今でも多くの人々に知られ、敬意を集めています。彼女の人生を通じて、当時の日本の歴史がどのように形成され、変遷していったのかを考える機会となるでしょう。

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