坊主としての自画像

『坊主としての自画像』は、フィンセント・ファン・ゴッホが1888年9月に制作した油彩の自画像です。この作品は、ゴッホが南フランスのアルルに滞在していた時期に描かれました。彼はこの地で、自身の姿を日本の僧侶に見立てて描いています。この作品は、ハーバード大学フォッグ美術館に所蔵されており、英語では「Self-Portrait (Dedicated to Paul Gauguin)」という名称で知られています。

ゴッホは、日本文化や日本美術に強い関心を抱いており、浮世絵を模写したり、自身の絵画の一部に取り入れたりしていました。彼の作品には、浮世絵の影響が見られるものが数多くあります。例えば、『タンギー爺さん』などにも、その影響が顕著に表れています。

この自画像は、単なる芸術的な表現への興味だけでなく、日本的な文化や精神的なあり方へのゴッホの憧憬が反映されています。彼は、日本の精神文化の象徴である「僧侶」としての自己を描くことで、自身の内面世界を表現しようと試みました。

この作品は、ポール・ゴーギャンから贈られた自画像に対する返礼として描かれたものとされています。ゴッホとゴーギャンは、この時期、共同生活を送っていましたが、芸術観の違いから衝突することも少なくありませんでした。しかし、互いの芸術を尊重する気持ちも持ち合わせており、この自画像はその証と言えるでしょう。ゴッホが、異文化である日本の僧侶の姿を借りて自画像を描いたことは、彼の多様な芸術的関心と内面を理解する上で重要な手がかりとなります。

この作品は、ゴッホが自身の芸術を追求する上で、いかに多岐にわたる文化に触れ、影響を受けていたかを物語る貴重な作品です。彼の作品に見られる日本趣味は、西洋美術史におけるジャポニズムの隆盛を代表するもののひとつとして、今日においても高く評価されています。

関連情報

* フィンセント・ファン・ゴッホの作品一覧

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