坪井航三

坪井航三：日清戦争を勝利に導いた海軍軍人

坪井航三（つぼい こうぞう、1843年4月6日-1898年2月1日）は、明治時代の海軍軍人で、その卓越した軍事戦略と指導力により、日清戦争における日本の勝利に大きく貢献した人物として知られています。長州藩出身の彼は、激動の時代に翻弄されながらも、着実に海軍でのキャリアを積み重ね、日本の近代海軍の礎を築いた一人と言えるでしょう。

長州藩から海軍へ

1843年、周防国三田尻（現在の山口県防府市）で長州藩医の次男として生まれた坪井は、幼名信次郎、のちに則光の名も使用しました。1863年、長州藩の遊撃隊に加わり、戊辰戦争に参加した経験を持ちます。その後、海軍の道へと進み、1864年の下関砲台攻撃を契機に本格的に海軍修行を志したという説もあります。1869年には、長州藩主の命により、坪井信友の養子となり、坪井姓を名乗ることとなりました。坪井家は代々長州藩と関わりを持つ家系でした。

海軍でのキャリアと海外留学

1871年、坪井は海軍大尉に任官し、「甲鉄艦」の副長に就任しますが、わずか3日後に免じられ、海軍修行を命じられます。この短期間の副長人事には、アメリカ海軍艦船での訓練を士官待遇で受けられるように兵部省が配慮したという説も存在します。同年9月、彼はアメリカ海軍アジア艦隊の旗艦コロラド号に乗り込み、中国沿岸を巡航、実地訓練を積みました。1872年4月には、コロラド号の帰国に同行し、渡米。ワシントンD.C.のコロンビアン・カレッジ付属中学校（現在のジョージ・ワシントン大学）で学びました。留学中は「坪井則光」と名乗っていました。1874年7月、官費留学生の帰国命令に従い帰国しました。

帰国後、海軍少佐に昇進し、「第一丁卯」艦長に就任しました。その後、様々な艦艇の艦長や、海軍省の要職を歴任しました。佐世保軍港司令官、海軍兵学校長、海軍大学校長など、要職を歴任し、日本の海軍の近代化に貢献しました。

日清戦争と単縦陣戦法

1894年、日清戦争が開戦。坪井は、かねてより主張していた単縦陣戦法を貫きました。この戦法は、敵艦船の攻撃を避けるため、自艦船を一直線に並ばせるものでした。そのため、坪井自身「単縦陣」の異名を持つことになります。

豊島沖海戦、黄海海戦では、旗艦を単縦陣の先頭に配置し、自ら指揮を執りました。特に黄海海戦では、北洋艦隊の背後に回り込むという大胆な戦略で勝利に貢献しました。この戦いを目撃したアメリカ海軍少佐フィロ・マクギフィンは、日本海軍の整然とした単縦陣と、それを用いた攻撃を高く評価しています。

晩年と功績

日清戦争後も、旅順口根拠地司令長官、常備艦隊司令官、横須賀鎮守府司令官などを歴任しました。1898年2月1日、現役のまま54歳で亡くなりました。

坪井航三は、長州藩士から出発し、アメリカ留学を経て、日本の近代海軍を支えた重要な人物です。彼の卓越した軍事力、指導力、そして革新的な戦術は、日本の海軍史に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、激動の時代を生きた軍人の生き様を示す、貴重な記録となっています。彼の功績は、単縦陣戦法の採用にとどまらず、日本の海軍組織の整備や人材育成にも及んでいます。その功績は今日でも高く評価されており、日本の近代海軍史において、重要な人物として位置づけられています。

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