坪内利幸

坪内利幸(つぼうち としゆき) - 将棋棋士の軌跡-

坪内利幸は、1949年2月1日、兵庫県神戸市に生まれた将棋棋士です。棋士番号は105番。有吉道夫九段を師事し、その師弟関係は、坪内氏の棋士人生において重要な役割を果たしました。

1964年、奨励会に入会。地道な努力を重ね、1970年4月1日、四段に昇段しプロ棋士としてデビューを果たします。これは、旧三段リーグ東西決戦で田丸昇三段に勝利した結果によるものでした。

プロ入り後は、独自の戦法で知られるようになりました。特にひねり飛車は坪内氏の代名詞とも言える戦法で、この戦法を用いて、若手時代の羽生善治や中村修といった強豪棋士を破る活躍を見せました。一方、ひねり飛車への対応力も高く、若手時代の屋敷伸之にも勝利を収めています。

特に注目すべきは、1990年に行われた羽生善治との対戦です。これは第56期棋聖戦一次予選での対局で、坪内氏が勝利を収めました。この対局は、羽生善治が竜王タイトルを獲得してから2戦目であり、タイトルホルダーとして初めて喫した黒星という、記念碑的なものとなりました。羽生善治との対戦は記録上この1戦のみであり、坪内氏の羽生善治に対する勝率は100％という驚異的な数字になっています。

1973年には、王位戦挑戦者決定リーグ紅組に出場。師匠である有吉道夫九段、さらに有吉九段の師匠である大山康晴十五世名人と「師弟三代」が同時にリーグ戦に参加するという、歴史的な出来事にも関わりました。結果は4戦全敗でリーグ陥落という結果に終わりましたが、この経験も坪内氏の棋士人生において貴重な経験となったことでしょう。

昇段は順調に進み、1972年には五段、1984年には六段、1992年には七段に昇段。公式戦での勝利を重ね、着実に実力を示しました。

しかし、2009年3月31日、フリークラス棋士引退規定により引退しました。長きに渡るプロ棋士生活に幕を閉じました。引退後も、その功績は高く評価され、2013年4月1日には引退棋士昇段規定により八段に昇段しています。

坪内氏の棋士人生は、509勝594敗という記録に象徴されるように、常に努力と挑戦の連続でした。順位戦C級1組では、22期連続在位という驚異的な記録を残し、これは順位戦の階級制度が現行のものとなった第7期以降では、日浦市郎氏に続く歴代2位の記録となっています。また、竜王戦では自己最高位となる4組まで勝ち上がっています。1979年の新人王戦では準優勝という成績も残しています。1976年度には連勝賞を受賞するなど、数々の栄誉にも輝きました。

坪内利幸という棋士は、その卓越した棋力と個性的な棋風で、将棋界に大きな足跡を残しました。ひねり飛車という戦法、そして強豪棋士との対戦、そして長きにわたるプロ棋士生活。それらは、後世の棋士たちにとって、大きな影響を与え続けることでしょう。

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