ひねり飛車

ひねり飛車：将棋における革新的な戦法

ひねり飛車は、将棋における高度な戦法の一つです。かつては「縦歩取り」とも呼ばれ、江戸時代末期に成立したとされる古い歴史を持つ一方で、現代将棋においても重要な戦法として認識されています。近年では、居飛車相掛かりの一種として多くの棋書に掲載され、プロ棋士も頻繁に採用する戦法となっています。

戦法の起源と発展

現在のひねり飛車は、戦後の新戦法である「縦歩取り」を基に、角田三男氏によって開発されました。角田氏は、伝統的な将棋観の中で育った棋士でしたが、偶然の発見からこの戦法を生み出しました。当初は異端的で、田舎将棋と蔑まれることもありましたが、升田幸三氏をはじめとする棋士たちがその有効性を示し、公式戦で成果を上げるにつれて、徐々に認知されるようになりました。

ひねり飛車のメリット

ひねり飛車には、他の振り飛車戦法にはない多くの利点があります。

強力な攻め: 受けに回る負担が少ないため、強力な攻めを仕掛けられます。
歩の活用: 先手が歩を保持できるため、歩を活用した戦術的な優位性を築けます。
急戦への対応力: 先手は飛車、角、銀、桂、歩を用いて、玉の守りも固めつつ、速い攻めを展開できます。
後手の不利: 後手は玉の守りが薄くなり、先手の攻勢に苦慮することが多いです。
強攻策の選択肢: 先手は、飛車角を捨てるような積極的な強攻策も取れます。
石田流への接続: 理想的な攻めの形である石田流と容易に接続できます。

これらの利点から、かつては「先手必勝法」ではないかと考えられたほど、将棋界に大きな衝撃を与えました。プロ棋士の人気戦法ランキングで上位にランクインした時期もあるほどです。

主な指し方と展開

ひねり飛車の基本的な指し方は、先手が相掛かりの形から歩を交換し、後手の△3四歩を狙って、2六の飛車を3六に移動させることから始まります。この飛車の移動が「ひねり」の由来です。この後、飛車を左翼へと転換していきます。

▲3六飛の狙いは、相手の左金を三段目に釣り上げて悪形にすることと、後手の角道を止めることです。その後、▲7六歩と突くことで、後手は△8六歩と突くことを余儀なくされます。この交換を起点に、先手は飛車交換を迫ったり、桂馬を用いた生け捕りを狙ったり、様々な攻撃を仕掛けていきます。

後手陣は先手陣に比べて飛車の打ち込みに弱いため、通常は飛車交換を避けようとしますが、先手は▲8六飛型（急攻型）や▲7六飛型（持久型）など、状況に応じて適切な作戦を選択していきます。

対ひねり飛車対策

ひねり飛車の猛威に対抗するため、様々な対策が考案されてきました。

△3四歩の省略: △3四歩を突かないことで、△3三金の悪形を避け、玉の守りを固くすることができます。
ネコ式縦歩取り: △3四歩を省略し、3六への飛車の移動を阻止する指し方です。
塚田スペシャルの応用: 1筋の端歩を活用した、後手玉の囲いを固める戦法です。
「位は高く・玉は固く」: 深浦康市氏が提唱した、後手が玉を堅く守り、高い位置を取ることを重視する対策です。

これらの対策によって、先手の勝率は抑えられてきましたが、米長邦雄氏による▲3七銀・5七金型などの新たな対策も考案され、ひねり飛車は今もなお指され続けています。

代表的なひねり飛車

角田流、丸田流、勝浦流、7八銀型（耀龍ひねり飛車）、升田式、7七金型（きんとうん戦法）など、多くのバリエーションが存在します。それぞれの流派は、独特の指し方や戦略を持っており、棋士によって個性豊かな戦いが展開されます。

後手番ひねり飛車

通常は先手番の戦法ですが、後手番でひねる指し方も存在します。横歩取りからのひねり飛車や、独特な手順から飛車をひねる戦法などが考案されています。

まとめ

ひねり飛車は、その革新性と多様な指し方、そして進化し続ける対抗策によって、将棋界において常に注目を集め続ける戦法です。今後も、新たな工夫や発展が期待される魅力的な戦法と言えるでしょう。

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