垂直帰線区間

垂直帰線区間（Vertical Blanking Interval: VBI）とは

垂直帰線区間とは、NTSCなどのアナログテレビの映像信号において、画面の描画を終えた電子ビームが、次の画面を描画するために上部へ戻る際に必要な時間として設けられた無画の部分です。画面の一番上から一番下までを描画し終えた電子ビームは、次の画面を描画するために、再び一番上に戻る必要があります。この電子ビームが戻る期間が垂直帰線区間です。

垂直帰線区間の構成

NTSC方式の場合、走査線の1番目から21番目までが垂直帰線区間として定義されています。この区間は画面に映像が表示されないため、様々な制御信号やデータを挿入するために利用されています。

具体的には、以下の構成になっています。

1番目～9番目: 垂直同期信号が含まれます。
1番目～3番目: 前置等価パルス
4番目～6番目: 垂直同期パルス
7番目～9番目: 後置等価パルス
10番目～21番目: テスト信号やその他のデータ信号が含まれます。
10番目～13番目: 日本の放送波では、データ多重放送の領域とされ、ITビジョン、ADAMS、Bitcastなどのデータが多重化されています。
14番目～16番目、21番目: 日本の放送では、文字多重放送の領域とされ、特に21番目には字幕情報が含まれます。
18番目: クリアビジョン放送では、GCR信号が含まれ、対応機種ではゴーストを抑制する機能に利用されます。
20番目: コピー制御信号であるCGMS-Aが含まれます。これはNTSC規格内で定義された信号です。

垂直帰線区間の活用

垂直帰線区間は、本来映像を表示しない部分を利用しているため、様々なデータを伝送するのに使われています。

データ放送: 10～13番目の走査線を利用して、番組に関連する情報やニュース、天気予報などのデータを送信しています。
文字多重放送: 14～16番目と21番目の走査線を利用して、字幕やニュース速報などの文字情報を送信しています。
コピーガード: ビデオソフトやDVDソフトでは、規格外のデータを挿入することで、不正コピーを防止する目的で利用されることがあります。
その他: テスト信号や制御信号など、放送システムに必要な様々な信号が挿入されています。

垂直帰線区間に関連する用語

垂直帰線消去期間 (Vertical Blanking Interval (VBI)): 垂直帰線区間を含む、電子ビームが画面外にいる期間全体を指します。
* オーバースキャン: テレビ画面の表示領域外の部分を指します。垂直帰線区間はオーバースキャン領域に含まれます。

まとめ

垂直帰線区間は、アナログテレビの映像信号において、映像を表示しない時間を利用して、様々なデータを伝送するための重要な役割を果たしています。データ放送や文字多重放送など、私たちの生活に身近なサービスを支える技術の一つです。

もう一度検索