ITビジョン

ITビジョンとは

ITビジョンは、1996年から2003年にかけて日本国内で展開された、アナログテレビ向けのデータ放送規格およびその愛称です。Inter Textの頭文字を取り名付けられました。東芝を中心とする団体によって規格化され、テレビ東京系列の一部とWOWOWで放送が行われました。

概要

テレビ東京では1996年10月に放送を開始し、系列局であるテレビ大阪、テレビ愛知、TVQ九州放送も順次放送を開始しました。ただし、テレビ北海道とテレビせとうちでは実施されませんでした。WOWOWでも1998年4月から放送が開始されています。

ITビジョンは、既存のテレビ放送と通信網を利用し、リモコンによる容易な操作で双方向テレビを実現することを目的に開発されました。アメリカのウィンク・コミュニケーションズ社の技術を流用し、一般的なテレビ受像機での表示を可能にしました。テレビ番組との連動・補完を主目的としたデータ番組の送信と、電話回線を用いた双方向通信への対応を特徴としていました。

ITビジョン向けのデータ放送は、垂直帰線区間の10番目から13番目（10H-13H）に重畳され、テレビ放送と共に送信されました。データ番組の制作や受信データの運営管理は、東芝の関連会社であるメディアサーブが担当していました。

受信端末と方法

ITビジョンを視聴するためには、ITビジョンチューナーを搭載したテレビを用意するか、既存のテレビに外付けのITビジョンチューナーを接続する必要がありました。受信機には、テレビ放送を受信するアンテナ端子と、双方向サービスを利用するための電話回線接続端子が備わっていました。

受信機は、地上テレビ放送を受信するためのVHF/UHFテレビチューナー、双方向機能に対応するためのモデム、受信したデータを蓄積するためのメモリを内蔵していました。また、固有のIDナンバーが割り振られており、双方向サービスを利用する際には、住所、氏名などの個人情報をメディアサーブへ登録する必要がありました。

リモコンには、ITビジョンの受信・視聴を開始するためのITメニューボタンやiボタン、項目の選択・決定を行うためのカーソルボタン・決定ボタン・Aボタン・Bボタン、ITビジョンからテレビ放送へ戻るための終了ボタン、データ番組内や機器設定で数値を入力するための数字ボタンなどが配置されていました。

ITビジョンの規格は、テレビジョン文字多重放送を応用・拡張したもので、ITビジョン受信機はテレビジョン文字多重放送の受信機能も備えていました。

サービス内容

ITビジョンでは、テレビ番組との連動の有無や、データの受信方法によってサービスが分類されていました。

連動ITサービス（番組ITサービス）: 放送中のテレビ番組と連動したデータを提供するサービス。番組の内容解説や、旅番組で紹介された場所の詳細情報などを提供しました。番組によっては、電話回線を利用したクイズや投票、プレゼント応募なども実施されました。
独立ITサービス（情報ITサービス）: テレビ番組とは独立した各種情報を提供するサービス。天気予報、株価、占い、番組情報などが提供されました。また、簡単なゲームなども提供されました。
* オンラインITサービス（ネットITサービス）: 電話回線を経由してサーバに接続し、データを受信する通信サービス。メディアサーブが運営し、ITビジョンの放送地域外からも利用可能でした。キャプテンシステムに類似したサービスでしたが、情報料はかからず、通話料のみで利用できました。

終焉

ITビジョンは、受信機や放送局が限られていたため普及が進まず、ISDB方式によるデジタルテレビ放送の開始により同様のサービスが提供されるようになったことや、インターネットの普及に伴い役割を終えました。WOWOWではBSデジタル放送開始の2000年に放送を終了し、テレビ東京でも地上デジタルテレビ放送の開始に合わせて、2003年にサービスを終了しました。

もう一度検索