垂直/短距離離着陸機

V/STOL機の解説

V/STOL機（垂直/短距離離着陸機）とは、短距離離陸（STOL）機能と、必要に応じて垂直離陸（VTOL）が可能な航空機を指します。これにより、特に様々な地形や状況に応じた運用が実現されており、特に軍事用途においてその利点が発揮されています。

概要

一般的に、これらの機体はVTOLとSTOLの両方を兼ね備えており、運用においては実際には垂直離陸よりも、むしろ短距離離陸と垂直着陸を組み合わせたSTOVL方式（short takeoff/vertical landing）が多用されます。短距離離陸においては、機体の推力があっても若干の滑走を行うことで、翼に風を当てて揚力を得ることができます。これにより離陸重量が増え、より多くの搭載物を運ぶことが可能です。たとえば、AV-8B攻撃機は、VTO時には最大離陸重量が9,414 kgですが、STO方式では14,061 kgにまで増大します。このように、スキージャンプ勾配を活用することで更に搭載量を増加できるため、特に実戦において重装備のまま任務を遂行することが期待されています。

着艦時においては、機体が燃料を消費することで軽くなり、その結果、安全性を考慮して垂直着艦を選ぶ傾向があります。垂直着艦には、自艦の動揺や風向・風速に左右されにくいという利点があるため、艦載機の運用に柔軟性をもたらします。例えば、イギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母では、長い滑走レーンを活かし、SRVL（Shipborne rolling vertical landing）の手法を用いることもあります。これは、若干の前進速度を保持しつつ着艦する方法で、機体の揚力を利用できるため、より重い状態でも安全に着艦できるようになります。ただし、接地後は車輪のブレーキに依存するため、天候が優れた状況でのみ使用されるという制約があります。

V/STOL機の種類

V/STOL機には多様な形式が存在し、異なる技術が採用されています。例えば、以下のようなカテゴリに分類されます。

推力偏向スラスト機

• - ホーカー P.1127／ハリアー（4つの回転ノズルを装備）

ティルトジェット機

• - ベル XF-109、ベル 65、EWR VJ 101

ティルトローター機

• - アグスタウェストランド AW609、ボーイング V-22 オスプレイ（XV-15のスケールアップ版）

ティルトウイング機

• - カーチス・ライト X-19、カナディア CL-84 ダイナバートなど

推力／揚力分離型機

• - ドルニエ Do 31、ロッキード XV-4 ハミングバード

超音速のV/STOL機も多々存在しましたが、実用化に至ったのは少数です。2016年にはF-35Bが装備化され、初の実用超音速V/STOL機となりました。

このように、V/STOL機は技術の進展を受けて多様なアイデアや設計が試みられる中で、特に軍事的な用途での存在意義が大いに注目されています。これからの運用においても、さらなる技術革新が期待されます。

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