城 (行政区画)

ベトナムの城（Thành）について

城（Thành）は、ベトナムの西山朝と初期の阮朝において存在した広域の地方行政区画です。この「城」という行政単位は、さらに上位に位置する地方行政区画である鎮や府に対するもので、特に地域の統治と管理を目的として作られました。

歴史的背景

西山朝時代、阮恵皇帝は後黎朝を打倒し、南は和義府（現在のクアンガイ省）、北は諒山鎮（現在のランソン省）に至る広範な領土を掌握しました。この時、彼は旧阮主の都である富春京（現在のフエ）に首都を設け、自身の直轄地として𤅷江（ジャン川）以南の地域を統治しました。後黎朝の首都、昇龍奉天府（現在のハノイ）には北城を設け、𤅷江以北の地域の管理を任命された皇族に委任しました。

1816年、阮福映は西山朝を滅ぼし、阮朝を開きました。北城は存続されましたが、𤅷江以北の清華鎮や永安鎮を直轄地域として管理し、南部では嘉定鎮が改称されて嘉定城（現在のホーチミン市）となり、ここでも重臣が任命されて地域の統治に当たりました。

明命帝（1820-1841年）の治世下では、南北の軍政に干渉する者として出世した悦郡公黎文悦と質郡公黎宗質が、総鎮としての権力を持つことになりましたが、彼らの影響は次第に皇権を脅かす存在として捉えられました。これを受けて、明命帝は行政区画の再編を行い、北城と嘉定城の二つの単位を廃止しました。

1831年、明命帝は承天府（現在のトゥアティエン＝フエ省）の北側にある地域を省に再編成し、北城を廃止しました。また、1832年には承天府以南の地域も省に改め、嘉定城を廃止しました。これにより、南北の行政管理が次第に整理されていきました。

さらに1834年、明命帝は大将張明講を派遣して高綿（現在のカンボジア）を支配下に置き、高綿全域に鎮西城を設けることになりました。これによって、33府2県が管理下に置かれましたが、当地の人々はベトナムの支配を受け入れることを拒み、反抗を続ける事態が発生しました。このため、阮朝は高綿の諸府県を次第に放棄せざるを得なくなりました。

管轄区域の概要

• - 北城: 西山朝時代には13鎮を管轄し、後の阮朝時代にはこれが11鎮に減少しました。
• - 嘉定城: 5鎮を管理していました。
• - 鎮西城: 10府を統括していた地域です。

こうした行政区画の変更や管理体制の見直しは、ベトナムの歴史において大きな変遷をもたらしました。特に各城の管理者たちが持つ権力とその影響力が皇帝の権威に対抗する様相を呈したことは、当時の政治の流動性を象徴する事例です。

参考文献としては、『嘉定城通志』や『大越地輿全編』、『大南一統志』などがあり、これらの文献は当時の行政や地域の変遷について詳しく記述されています。

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