城戸俊三

城戸俊三は、1889年（明治22年）7月4日に宮城県仙台市で生まれ、1986年（昭和61年）10月3日に97歳で亡くなった、大日本帝国陸軍の軍人であり、馬術選手です。

旧制宮城縣立仙台第一中学校（現在の宮城県仙台第一高等学校）を卒業後、陸軍士官学校に進み、1909年（明治42年）に卒業して騎兵将校となりました。フランスのソミュール騎兵学校への留学を経て、陸軍騎兵学校の教官を務め、馬術の指導にあたりました。

1928年（昭和3年）には、陸軍教育総監部の命により、騎兵学校の訓練馬導入のためフランスに出張し、外国産馬の買付を担当しました。その詳細な報告書は、当時の陸軍大臣である白川義則に提出されています。

城戸は馬術選手としても卓越しており、国内外の大会で活躍しました。1928年アムステルダムオリンピックでは、愛馬「久軍號」と共に総合馬術に出場し、21位の成績を収めました。

1932年ロサンゼルスオリンピックでは、馬術日本代表の主将として総合馬術に出場しました。競技は順調に進んでいましたが、最終盤で久軍號の異変に気付き、直ちに下馬して競技を棄権しました。この『競技よりも馬の健康を優先した』城戸の行動は、観衆から大きな賞賛を受けました。このエピソードは、小学校の国語教科書にも掲載され、「人馬とともに」や「勝利をすてて」といった題で、多くの子供たちに感動を与えました。

また、アメリカ合衆国人道協会は、城戸の行動に感銘を受け、カリフォルニア州リバーサイドにあるワールドピースブリッジの橋桁に、『情は武士の道』と刻まれたレリーフを建立しました。ロサンゼルスオリンピックで使用した鞍一式は、ロサンゼルス市に寄贈されましたが、後に日本に返還され、秩父宮スポーツ博物館で長く展示されました。

オリンピック後、城戸は陸軍騎兵中佐で予備役編入となり軍を退きました。その後、宮内省に入省し、昭和天皇をはじめとする皇族の馬術指導を行いました。第二次世界大戦後には、進駐軍の要望により、皇居内に設置された「パレス乗馬倶楽部」で、元上官の遊佐幸平少将と共に指導にあたりました。

宮内省退官後は、日本馬術連盟の常務理事を務め、戦後の日本馬術の復興と再建に尽力しました。また、1972年ミュンヘンオリンピック馬術日本代表で、後に日本オリンピック委員会会長を務めた竹田恆和など、後進の指導にも力を注ぎました。さらに、1964年東京オリンピックの馬術競技準備のため、1960年ローマオリンピックを視察し、詳細な報告書を作成して日本オリンピック委員会などに提出しました。

城戸は、戦没軍馬の慰霊のため、伊藤國男の彫塑による馬の像を靖國神社に建立する活動を行い、「歿馬慰霊像奉献協賛会」を立ち上げ、多くの寄付を集めました。1958年（昭和33年）4月7日には、「戦没馬慰霊像」が建立され、除幕式が行われました。以後、毎年4月7日が『愛馬の日』と定められ、慰霊祭が執り行われています。

城戸俊三は、軍人、馬術選手、指導者として多岐にわたり活躍し、その生涯を通して人馬への深い愛情を示した人物として、人々の記憶に刻まれています。

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