城戸幡太郎

城戸幡太郎：日本の心理学と教育学に貢献した巨人

城戸幡太郎(1893年-1985年)は、日本の心理学と教育学に多大な貢献をした学者です。愛媛県に生まれた彼は、旧制愛媛県立松山中学校、巣園学舎、早稲田大学高等予科を経て、東京帝国大学文科大学心理学科選科を卒業しました。

卒業後は1924年から法政大学教授として教壇に立ちました。1931年から1933年にかけては、岩波講座『教育科学』の編集者として活躍。1933年には自ら雑誌『教育』を創刊し、教育界に新たな視点を提示しました。さらに、1936年には保育問題研究会、1937年には教育科学研究会を設立するなど、精力的に活動しました。財団法人滝乃川学園教育部長も兼務した時期もあります。

1937年には、留岡清男と共に東北と北海道を巡り、冷害による被害状況を視察しています。この経験から、彼は「生活綴方」に対する批判を展開し、大きな議論を呼びました。

戦時中は1940年12月に大政翼賛会組織局連絡部副部長に就任しましたが、翌1941年4月には翼賛会を辞職。1944年6月には治安維持法違反容疑で拘束される（教科研事件）という憂き目にも遭いましたが、1945年5月、証拠不十分で不起訴となりました。

戦後、北海道大学教育学部教授に就任し、1957年に定年退官しました。その後も、東京文理科大学、工学院大学、中央大学、東洋大学、北星学園大学などで教授を務め、国立教育研究所所長、北海道教育大学学長、正則高等学校校長などの要職を歴任しました。1965年にはウズナーゼ心理学研究所を訪問、1971年には子どもの文化研究所所長に就任するなど、その活動は多岐にわたっています。

研究活動においては、数多くの論文を発表し、心理学、教育学の進歩に大きく貢献しました。主な論文としては、「心理學に於ける民族的研究の方法について」、「文化の改造と心理學」、「一般能力の過程に就て」、「ライプチヒの心理學會と現代心理學の傾向」などがあります。これらの論文は、当時の心理学研究に大きな影響を与えました。

また、城戸幡太郎は多くの著書も著しました。代表的な著書としては、『文化と個性と教育』、『心理学の問題』、『古代日本人の世界観 日本の言語と神話』、『心理学概説』、『現代心理学の主要問題』、『国語表現学』、『心理学史　現代哲学全集』、『生活技術と教育文化』、『幼児教育論』、『民生教育の立場から』などがあります。これらの著作は、現在でも心理学・教育学の研究者や学生によって広く読まれ、高い評価を得ています。

さらに、彼は『教育学辞典』（岩波書店）、『新教育研究原語辞典』（文民教育協会）、『実験心理学提要』（岩波書店）、『体系教育心理学辞典』（岩崎書店）などの編纂にも携わっており、教育学研究の発展に貢献しました。

1968年には勲二等瑞宝章を受章し、その功績が国家によって認められました。彼の息子である城戸浩太郎氏（1926年-1958年）は社会学者として東京学芸大学講師を務めていました。

城戸幡太郎は、教育者、研究者としてだけでなく、教育行政にも深く関わり、日本の教育制度の改革に貢献しました。その多大な功績は、日本の心理学と教育学の歴史に大きな足跡を残しています。彼の生涯と業績は、後世の研究者や教育者にとって、貴重な遺産であり続けるでしょう。

もう一度検索