城東むかし町家

城東むかし町家（旧梶村家住宅）

岡山県津山市の中心部に位置する津山城。その東側に広がる城東町並み保存地区の一角に、「城東むかし町家」として知られる歴史的な建造物が静かに佇んでいます。この建物は、江戸時代に津山で指折りの豪商として栄えた旧梶村家の邸宅であり、当時の豊かな暮らしぶりや商家の威容を今に伝える貴重な文化遺産です。建物そのものは国の登録有形文化財に、そしてその敷地内に広がる美しい庭園は、国の登録記念物「旧梶村氏庭園」に指定されており、地域の歴史と文化を物語る重要な場所となっています。

梶村家は、江戸時代の半ばにあたる明和4年（1767年）には、既に「札元並」という重要な町役を担っており、その後も数代にわたり「札元」という地位を務めた有力な家柄でした。明治4年（1871年）に正式に梶村姓を名乗るようになります。彼らの経済的な基盤と地域における影響力が、この壮麗な邸宅の建築と維持を可能にしたと言えるでしょう。

邸宅の敷地は広大で、間口は約31.5メートル、奥行きは約34メートルにも及びます。現在の建物は、江戸時代後期に建てられた主屋を中心に、明治時代から昭和初期にかけて、それぞれの時代の生活様式や必要に応じて増築・改築が重ねられた結果、現在の姿となりました。例えば、母屋が江戸時代末期の建築であるのに対し、付属屋は明治時代に、趣のある座敷や西洋の要素を取り入れた洋館、裏座敷、そして東蔵は大正時代に建てられました。さらに、昭和初期には西蔵や茶屋が増築されており、約150年以上にわたる邸宅の歴史と、その間に生じた建築様式の変化を一度に見ることができる、大変興味深い構造となっています。これらの建物群は、平成9年（1997年）に国の登録有形文化財としてその歴史的価値が認められました。

邸宅の見どころの一つである庭園は、「旧梶村氏庭園」として平成24年（2012年）に国の登録記念物に登録されました。商家の庭園でありながらも、四季折々の美しさを楽しめる工夫が凝らされており、建物内部から眺める景色は格別です。この庭園は、梶村家の美意識と、当時の庭園文化を今に伝える貴重な事例となっています。

城東むかし町家は、津山城の東側に位置する城東町並み保存地区の中心部にあります。所在地は岡山県津山市東新町40番地です。

観光施設として一般公開されており、その歴史的な佇まいを間近で見学することができます。開館時間は午前9時から午後5時までで、入館は午後4時30分までとなっています。休館日は毎週火曜日（ただし祝祭日の場合はその翌日）と、年末年始（12月29日から1月3日）です。嬉しいことに、入館料は無料となっていますので、気軽に立ち寄ることができます。施設に関する問い合わせは、電話番号 (0868)22-5791まで、津山市教育委員会生涯学習部文化課が所管しています。

交通アクセスについても整備されています。JR津山駅からは徒歩で約20分（距離にして約1.5キロメートル）と、散策しながら訪れるのに適しています。車を利用する場合も、中国自動車道の津山インターチェンジから約10分、または院庄インターチェンジから約25分と、比較的容易にアクセスできます。

歴史的な価値に加え、城東むかし町家はメディアにも登場しています。例えば、NHKの連続テレビ小説「あぐり」では、主人公の嫁ぎ先である望月家の舞台として撮影に使用され、その美しい景観がお茶の間に届けられました。

このように、城東むかし町家は、江戸時代の豪商の暮らしや歴史的な建築の変遷、美しい庭園文化を体験できる貴重な場所です。津山市を訪れた際には、ぜひこの魅力的な旧家を訪れ、タイムスリップしたかのようなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

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