登録記念物

登録記念物とは

登録記念物とは、日本の文化財保護法に基づき、文部科学大臣によって登録された記念物を指します。この制度は、特に保存と活用が必要とされる記念物を保護するために設けられました。文化財保護法における「記念物」は、貝塚、古墳などの遺跡、庭園、橋梁などの名勝地、そして動物、植物、地質鉱物といった自然に関するものを含むと定義されています。

制度創設の背景

文化財保護法では、記念物のうち特に重要なものを指定する制度として、史跡、名勝、天然記念物が定められています。しかし、近代の産業遺産のように、文化財としての評価がまだ確立されていない記念物については、保護の必要性が高まっているにもかかわらず、既存の指定制度では十分な保護が困難でした。

一方で、有形文化財においては、1996年の法改正により、重要文化財の指定制度を補完する形で、建造物を対象とした登録有形文化財制度が導入され、近代以降の建造物保護に成果を上げていました。

このような状況を踏まえ、2004年の文化財保護法改正により、記念物についても登録制度が導入されました。これにより、保存と活用が必要な記念物を登録し、より広範囲な保護を図ることが可能になりました。この改正では、建造物以外の有形文化財や有形民俗文化財についても同様の登録制度が設けられました。

登録の対象

登録記念物の対象となるのは記念物ですが、国が指定する史跡、名勝、天然記念物、または地方公共団体が指定する文化財は対象外です。これは、登録記念物制度が、既存の指定制度を補完する役割を担っているためです。

登録後、登録記念物が国や地方公共団体の指定を受けた場合、原則として登録は抹消されます。ただし、地方公共団体の指定を受けた場合でも、保存や活用が必要であり、所有者の同意がある場合は、例外的に登録を維持することが可能です。

2006年1月26日には、初の登録物件として、「函館公園」、「再度公園及び再度山永久植生保存地」、「相楽園」の3件が登録されました。なお、「再度公園及び再度山永久植生保存地」は、後に名勝に指定されたため、現在は登録記念物ではありません。

登録の基準

文化財登録原簿に登録する記念物の基準は、「登録記念物登録基準」として定められています。基準は、遺跡関係、名勝地関係、動物・植物・地質鉱物関係の3つに分類されています。

遺跡関係

政治、経済、文化、社会に関する遺跡で、原則として近代までのもの
以下のいずれかに該当するもの
日本の歴史を理解する上で重要なもの
地域の歴史の特徴を示すもの
歴史上の人物などに関するもの

名勝地関係

公園、庭園などの名勝地で、原則として人文的なものは造成後50年を経過したもの、自然的なものは広く知られたもの
以下のいずれかに該当するもの
造園文化の発展に寄与しているもの
時代を特徴づける造形をよく残しているもの
再現が容易でないもの

動物、植物及び地質鉱物関係

動物、植物、地質鉱物で、国土の成り立ち、自然の特徴、または人と自然の関わりを知る上で重要なもの
以下のいずれかに該当するもの
日本で作り出された飼養動物および飼育地
日本で作り出された栽培植物および生育地
動物、植物、岩石、鉱物、化石の標本
上記以外で、地域独特の自然物または自然現象

登録記念物一覧

2024年10月現在、134件の登録記念物があります。その一部をご紹介します。

遺跡関係

会津飯盛山白虎隊士墳墓域（福島県会津若松市）
二ヶ領用水（神奈川県川崎市）
立山砂防工事専用軌道（富山県中新川郡立山町）
菊池海荘宅跡（和歌山県有田郡湯浅町）
南海地震徳島県地震津波碑（徳島県内各地）
沖縄県鉄道与那原駅跡（沖縄県島尻郡与那原町）

名勝地関係

函館公園（北海道函館市）
鳴海氏庭園（青森県黒石市）
旧南部氏別邸庭園（岩手県盛岡市）
山下公園（神奈川県横浜市中区）
法師庭園（石川県小松市）
曽根氏庭園（磁叟庵庭園）（岐阜県瑞浪市）
日本万国博覧会記念公園日本庭園（大阪府吹田市）
相楽園（兵庫県神戸市中央区）
石谷氏庭園（鳥取県八頭郡智頭町）
夕日岩屋（大分県豊後高田市）
朝日岩屋（大分県豊後高田市）

動物、植物及び地質鉱物関係

田沢湖のクニマス（標本）（秋田県秋田市、仙北市）
禅寺丸柿（神奈川県川崎市麻生区）
震生湖（神奈川県秦野市・足柄上郡中井町）
マチカネワニ化石（大阪府豊中市）

登録が抹消されたもの

過去には登録されていたものの、後に史跡や名勝に指定されたことなどにより登録が抹消された物件も存在します。例えば、

再度公園及び再度山永久植生保存地（兵庫県神戸市）
* 牧野記念庭園（牧野富太郎宅跡）（東京都練馬区）

などが挙げられます。

まとめ

登録記念物制度は、文化財保護の対象を広げ、近代の産業遺産や地域独特の自然物など、多様な文化財を保護するための重要な制度です。登録された記念物は、歴史、芸術、学術的に価値が高く、後世に伝えるべき貴重な文化遺産です。

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