城東町並み保存地区

城東町並保存地区：江戸時代の面影を今に伝える商家町

岡山県津山市の城東町並保存地区は、津山城の東側に広がる、江戸時代初期に整備された城下町の面影を色濃く残す地域です。この地区は、出雲往来沿いに発展した商家町であり、歴史的な建造物が数多く残っています。2013年には、その歴史的価値が認められ、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

地理と歴史

津山市は、岡山県の北東部に位置し、美作地方の中心都市として栄えてきました。城東保存地区は、津山城の東側を流れる宮川の東岸に位置し、橋本町、林田町、勝間田町、中之町、西新町、東新町の約1050メートルに及ぶ細長い範囲に広がっています。この地域は、津山城の築城とともに城下町として整備され、出雲往来に沿って商家が立ち並びました。

1603年、森忠政によって津山城の築城が開始され、それに伴い城下町の整備も進められました。当初は、城の周囲に武家町が、城の南側には町人地が形成されましたが、その後、宮川の東側にも出雲往来に沿って商家町が広がっていきました。1698年からは松平家が津山藩の藩主となり、明治の廃藩置県までこの地を治めました。

江戸初期から段階的に形成された城下町は、1700年代初期には現在の町並みがほぼ完成していたと考えられています。特に、宮川大橋から東へ向かって、橋本町、林田町、勝間田町、中之町、西新町、東新町と、往来沿いに商家町が拡大していきました。江戸時代の資料からは、この地区で敷地の分割や統合が頻繁に行われていたことが分かり、当時の活発な経済活動を窺い知ることができます。また、明治時代以降も、高瀬舟による物資の集積地として賑わいを見せていました。

保存地区の町並み

城東町並保存地区は、江戸時代に形成された地割りを良く残しており、出雲往来に沿って商家が立ち並んでいます。また、城下町特有の構造として、街道の東端、中程、西端の三ヶ所に鍵型街路（枡形）が設けられています。延宝6年（1678年）の絵図には、宮川大橋西詰に大番所、中程には木戸（関貫）が描かれており、当時の街の様子を伝えています。

町家の敷地は、出雲往来に面して間口が2間から4間程度と比較的狭いものの、奥行きはほぼ17間と規格的に地割りされています。敷地の背面には背割溝が設けられており、現在もその一部が残っています。町家の特徴として、通りに面した表側の壁は側溝ぎりぎりに建てられ、一階の庇が隣家と揃うことで、往来に沿って庇が長く連なる美しい景観を形成しています。主屋は通りに面して建てられ、その後ろには土蔵や付属屋が配置されています。江戸時代から明治時代にかけて建てられた商家には、二階部分が低い厨子（しつ）二階建ての主屋が多く見られ、重厚な軒が連なっています。また、昭和初期までに建てられた町家も、切妻造平入、出格子、虫籠窓、なまこ壁、袖壁などの伝統的な建築様式を取り入れており、歴史的な風情を醸し出しています。

街道沿いの270棟の家屋のうち、約160棟という高密度で近世以降の伝統的建造物が現存しており、その保存状態の良さも特筆すべき点です。

伝統的建造物群保存地区概要

• - 地区名称：津山市城東伝統的建造物群保存地区
• - 所在地：岡山県津山市橋本町、林田町、勝間田町、中之町、西新町、東新町の各一部
• - 種別：商家町
• - 選定年月日：2013年（平成25年）8月7日
• - 選定基準：伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
• - 保存地区面積：8.1ヘクタール
• - 伝統的建造物数：231件（令和3年8月31日現在）

保存地区内の文化財

国の重要文化財

• - 旧苅田家住宅：江戸時代中期に酒造業を始めた苅田家の屋敷で、保存地区内で最大規模を誇ります。主屋、三階蔵、米蔵、前蔵、西蔵、大蔵、醤油蔵、新蔵、巽門及び浴室、裏門などが含まれ、歴史的な建造物群を構成しています。特に、寛政年代に建てられた主屋は、間口が広く、重厚な造りが特徴です。

国の史跡

• - 箕作阮甫旧宅：江戸時代の蘭学者である箕作阮甫が少年期を過ごした家です。現在は解体・復元されており、当時の面影を伝えています。

国の登録有形文化財

• - 城東むかし町屋（旧梶村家住宅）：江戸末期に建てられた主屋や、昭和初期までに建てられた蔵などが残る町家です。梶村家は、藩札の発行を任されていた家柄です。主屋、表門、座敷、茶室、西蔵、東蔵、付属屋、洋館・裏座敷などが含まれます。洋館はドイツ壁仕上げの洋風の建物で、他の建造物とは異なる趣があります。

国の登録記念物

• - 旧梶村氏庭園：城東むかし町屋に付属する庭園で、茶室の周辺の露地庭とともに、主屋の座敷に面した池泉庭園が設けられています。

周辺施設

保存地区内

• - 城東むかし町屋（旧梶村家住宅）
• - 作州城東屋敷
• - 箕作阮甫旧宅
• - 小坂田昌平家
• - 津山洋学資料館
• - 河野美術館
• - 旧苅田家住宅（苅田酒造）

保存地区外

• - 津山市城西伝統的建造物群保存地区
• - 津山城

指定・選定・受賞

• - 町並重点整備地区（1987年、津山市指定）
• - 岡山県町並保存地区（1989年、岡山県指定）
• - 手づくり郷土賞「歴史をいかした街並み」受賞（1989年、建設省）
• - 重要伝統的建造物群保存地区（2013年（平成25年）、文部科学大臣選定）

交通アクセス

• - 津山線／姫新線 津山駅 徒歩20分
• - ごんごバス（東循環線）に乗車し、東新町下車。
• - 中鉄北部バス、美作市営勝田バス、美咲町柵原星のふる里バスの何れかに乗車し、天神橋下車。

城東町並保存地区は、江戸時代の城下町としての歴史と、その後の発展を今に伝える貴重な場所です。その美しい町並みは、訪れる人々を魅了し、歴史を感じさせる空間を提供しています。

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