城絵図

城絵図とは

城絵図は、中世から近世の日本において、城郭の曲輪の位置や周囲の地形などを描いた絵図のことを指します。城下町を重点的に描いた図は、特に城下絵図や城下町図として区別されることもありますが、城内に城主が居住せず、城下の施設に生活の場を持つケースもあるため、城下を城の一部とみなし、両者を区別しない考え方もあります。

概要

城絵図は中世から様々なものが作られていましたが、最も著名なものとして、正保元年（1644年）に将軍徳川家光の命によって、国絵図や郷帳とともに諸大名から提出された城絵図（正保城絵図）が挙げられます。当時、武家諸法度によって城の無断修補は禁じられていたため、江戸幕府は正保城絵図によって全国の城の構造や城下町の配置などを把握しました。

正保城絵図の多くは、慶応4年（1868年）の江戸開城の際に新政府軍に接収され、その多くが行方不明になったとされています。江戸時代には、城絵図は機密事項として扱われる一方、軍学・兵学の興隆に伴い、築城や攻城の研究のために城絵図が作成されるようになりました。その際、一国一城令などで廃城となった中世の城郭の絵図が用いられることが多く、特に浅野文庫所蔵の『諸国古城之図』は、その収録数の多さから研究価値が高いとされています。

近年では、平成26年に松江歴史館から『極秘諸国城図』が発見され、城絵図研究に新たな光が当てられています。

城絵図の役割

城絵図は、単に城の構造を記録するだけでなく、当時の社会情勢や技術水準、軍事戦略などを知る上で貴重な資料となります。江戸時代には、幕府が全国の城を管理するために、また、大名が自らの領内の城を把握するために作成されました。さらに、軍事的な観点からも、城の防御力を評価したり、攻城戦の戦略を立てるための基礎資料として活用されました。

城絵図の種類

城絵図には、以下のような種類があります。

正保城絵図: 江戸幕府が全国の大名に提出を命じた城絵図。全国の城郭の構造や城下町の配置を把握するために作成された。
城下絵図・城下町図: 城下町を重点的に描いた絵図。城下町の構造や施設の配置を知る上で貴重な資料。
古城図: 廃城になった中世の城郭を描いた絵図。築城技術や歴史的な変遷を研究するための資料。
軍学・兵学用城絵図: 築城や攻城の研究のために作成された城絵図。軍事戦略を研究するための資料。

城絵図の現状

現在、城絵図は歴史資料として非常に重要視されており、各地の博物館や図書館で保管・公開されています。また、インターネットを通じてデジタル化された城絵図を閲覧することも可能です。

城絵図の研究は、日本の城郭の歴史や軍事史、都市計画などを知る上で欠かせない分野であり、今後も新たな発見が期待されます。

関連情報

参考文献
小和田哲男「城絵図」『国史大辞典 15』吉川弘文館、1996年、ISBN 978-4-642-00515-9
杉本史子「城絵図」『日本歴史大事典 2』小学館、2000年、ISBN 978-4-09-523002-3
外部リンク
正保城絵図（国立公文書館）
城絵図・城郭図を探す - 調べ方案内（国立国会図書館）

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